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【明解要解】先行き混迷 中型ロケット「GX」開発 (1/2ページ)
■エンジン完成遅れでコスト高騰
衛星打ち上げビジネスへの参入を見込んで、日本で初めて官民共同開発を目指す中型ロケット「GX」の先行きが混迷している。宇宙航空研究開発機構(JAXA)が担当する2段目エンジンの完成が遅れ、開発費が高騰。「低コスト」などの前提が崩れ、計画の見直しを議論している文部科学省宇宙開発委員会の専門委では、見通しの甘さなどを指摘する厳しい意見が相次いでいる。(社会部 小野晋史)
「率直にいうと、失敗したなと思う」。4月24日、GX計画での官民の役割分担などを議論する宇宙開発委の小委員会で、委員の1人がため息をついた。
今年1月の設置以降、GX開発の現状が明らかになるにつれ、会合は計画の今後の方向性よりも計画自体の意義を議論する場となった。5月中には結論を出す予定だが、“前向き”の打開策は見えてこない。
GXは当初、宇宙技術の産業化や、主力ロケット「H2A」を補完する役割などが期待されてきた。平成23年度中の初打ち上げを目指す。IHIなど民間企業が担当する1段目エンジンは既存の米国製アトラス3を転用して開発コストを下げ、JAXAが開発する2段目の液化天然ガス(LNG)エンジンで、小型軽量化を図る戦略だった。
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計画通りに完成すれば、商業衛星ビジネス参入にも道が開けると見込んでいたが、世界初となるロケット用LNGエンジンの開発にJAXAが難航。国が負担する開発費が膨らんだだけでなく、すでに時代遅れとなっていたアトラス3の生産ライン維持費をはじめ、民間側のコストも増大させた。
文科省は「開発遅れは想定外」としているが、既存技術を活用して「低コスト」「信頼性」の実現を目指しながら、一方で世界初の技術開発を盛り込んだ時点で見通しが甘かった−とも指摘される。
民間側は昨年末、これ以上の負担は担えないとして、JAXAに1段目やシステム全体の設計などにも関与することを要望。さらに、アトラス3の代わりにやや大型の最新機、アトラス5の機体を採用した。