試験田で地元関係者と稲の栽培について話し合う長谷川客員教授(右)=昨年7月、蘇州市内
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石川県と友好交流している中国・江蘇省で、県立大の長谷川和久客員教授(土壌・肥料
学)が指導する有機農法が高く評価され、モデル農場の水田の作付面積が十倍の約二十ヘ
クタールに拡大される見通しとなった。中国で残留農薬問題などが課題となる中、現地の
行政関係者が「石川農法」に関心を示した。六月にも訪中する長谷川客員教授は「適切な
農薬使用も含め循環型農業の素晴らしさを伝えたい」と食の安全の伝播(でんぱ)に意欲
を示している。
モデル農場は、金沢市の姉妹都市である蘇州市が昨年造成した。水田約二ヘクタールを
はじめ、白菜などの畑や家畜舎が完成しており、総面積は約六ヘクタール。長谷川客員教
授はニワトリやブタの糞尿(ふんにょう)を使った堆肥(たいひ)づくりのほか、火力発
電所の石炭灰を稲作に活用する方法などを伝授した。
今春までに農場で収穫された農作物の品質が行政や地元住民の関心を呼んだ。今年から
水田を十倍規模に広げることが固まり、将来的には千倍に拡大することも検討中という。
長谷川客員教授によると、中国では生産性を重視するあまり農薬に依存する傾向が強い
。中国製ギョーザ中毒事件が起きる前から、農薬の適正使用が課題として浮上しており、
有機農法の安全性が注目されているという。八月の北京五輪を控え、今年三月の全国人民
代表大会(全人代=国会)でも食の安全確保が強調された。
約四十年間、農業を研究してきた長谷川客員教授は、十六年前から中国・内モンゴル自
治区のゴビ砂漠で水稲栽培を指導。この成果を知った蘇州市が農業指導を依頼した。
中国の農業生産技術の向上は国内農業を圧迫するとの指摘もあるが、長谷川客員教授は
「日本は食糧輸入に頼らざるを得ないのが現状。『最大の食糧基地』ともいえる中国の農
産物の品質向上は日本の食の安全にもつながる」と話している。