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2008年5月6日

◎「熱狂の日」閉幕 来年はより「金沢らしく」

 このイベントが定着すれば、金沢に「楽都」という新たな顔が加わるのではないか。そ んな期待感を抱かせたのが、大型連休中に開催された「ラ・フォル・ジュルネ金沢『熱狂の日』音楽祭2008」である。北陸新幹線開業へ向け、地域の魅力を高める催しとして継続させ、来年はより金沢らしい音楽祭にしたい。

 フランス・ナント市発祥のこの音楽祭は金沢が世界六番目の開催地となった。一週間で 百十七公演がJR金沢駅周辺で繰り広げられ、もてなしドームも野外音楽堂のような熱気にあふれた。クラシック通や初めてオーケストラの生演奏を聴いた人、たまたま立ち寄った観光客らがテーマの「ベートーベン」を通して一体となり、音楽が人々の心を豊かにし、街を活気づける力を持つことをあらためて感じさせた。

 公演によっては零歳以上、三歳以上も入場でき、県立音楽堂では楽器体験など多彩なキ ッズプログラムが催された。子どもと現代アートの垣根を低くした金沢21世紀美術館に通じる試みであり、将来の聴き手を育てることも音楽堂が担う今後の重要な役割であろう。

 音楽祭の開催は国内では東京に次いで二番目である。誘致に尽力したオーケストラ・ア ンサンブル金沢の音楽監督、井上道義氏は本紙寄稿で「東京一極集中への戦いを挑む」と金沢開催の意義を語った。観客動員数では東京に及ばないものの、金沢ではべートーベンの調べに合わせて能が演じられ、琴の演奏で名曲が披露された。そうした和洋の融合は東京との違いを際立たせる個性になりうる。「ラ・フォル・ジュルネ」はなぜ金沢で開催されるのか。その意味を問い続けることが井上氏の言う「東京との戦い」の戦略の一つとなろう。

 音楽祭の生みの親であるルネ・マルタン氏は開催地に金沢を選んだ理由として、歴史や 伝統文化を大事にする土地柄を挙げた。その街がもつ魅力は音楽に共鳴するのだという。だとすれば、歴史的な町並みや文化に磨きをかけることは都市全体で「音響効果」を高めることにつながる。街が音楽を育て、音楽が街に元気や潤いを与える好循環を大事にしたい。

◎アルペンルート 100万人超え目標に誘客

 立山黒部アルペンルートの四月の入り込み客数は前年同期比35%増の約九万千七百人 (速報値)となり、過去最高を記録した。昨年とは打って変わって、これ以上ないスタートダッシュと言えよう。昨年の入り込み客数は二十二年ぶりに百万人を割り、関係者に大きな衝撃を与えただけに、今年は何としてもこの勢いを持続させ、再び大台に乗せたいところだ。

 昨年は、暖冬に加えて能登半島地震の風評被害があり、百万人割れも避けられないこと だったと言えなくもないが、そうした特殊要因がない今年も大台に届かなければ、ショックも、周辺の観光地などに与える影響も昨年以上に大きいはずだ。アルペンルートを運営する立山黒部貫光だけでなく、富山県内の観光関係者が「百万人超え」という目標を共有し、石川県などとも連携してより一層の魅力発信に努めねばならない。

 多彩な観光資源を誇る北陸でも、アルペンルートは「看板」の一つと言える存在だ。今 年は、官民一体の「反転攻勢」でその吸引力を高め、勢いを富山県全域、さらには北陸全域に波及させていきたい。

 大台超えのカギを握るのは、やはり国内からの誘客である。立山黒部貫光は今年、解説 員付きの定期観光バス「たちやま」の運行期間を大幅に延長することなどを決めているが、こうした取り組みは、国内観光客、とりわけ個人客の呼び込みには効果的だろう。後はPR次第だ。立山黒部の世界遺産登録運動ともうまく連動させて、七月に東海北陸自動車道で結ばれる中京をはじめとする三大都市圏などで積極的なキャンペーンを展開してもらいたい。

 ここ数年、右肩上がりで推移している海外からの観光客については、今年も強い追い風 が吹いていると言ってよいだろう。特に、最大の「お得意さま」である台湾では、これまで現地で実施してきた宣伝活動の効果が期待できるうえに、六月の小松―台北定期便就航も好材料となる。今後も、韓国も含めてまず伸ばせるところを伸ばす姿勢を堅持したい。


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