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がんを生きる:/4 乳がん 「命助かるなら、しゃあない」改善しなくちゃ /大阪

 ◇患者に自信取り戻させる米国のケアに感動

 「米国では、がん患者や患者団体へのサポートの質も量も、日本と全く違う」

 ワシントンDCで約1週間研修し、2日に帰国したばかりの富田林市、河野一子さん(53)が米国での体験を熱心に話した。

 「抗がん剤治療中の患者にスキンケアやメーキャップ、かつらの着け方を教える団体は20年の歴史があるし、メーキャップを医療ととらえて行う団体もあった」。進んだ米国の現状に、驚きや感動の連続だったという。

 河野さんは9年前に乳がんの告知を受け、手術と放射線治療、抗がん剤治療、ホルモン療法を経験。今は乳がんの患者団体や支援団体の代表を務め、がんを取り巻く現状を良くしようと活動する。

 一般に、抗がん剤治療中は髪が抜け、肌が荒れるなど外見が変化することがある。外出がおっくうになるが、通院や子どもの学校行事などがあり、引きこもってもいられない。

 河野さんは言う。「がん治療による外見の変化や食欲不振などの苦痛や悩みは置き去りにされてきた。『命が助かるなら、しゃあないじゃないか』って。でも、改善できるなら改善しなくちゃ。メーキャップで乳がんのお母さんが笑顔を取り戻せば、子どもも救われるでしょ」

 米国では、多忙なスケジュールをこなした。メーキャップの方法、患者団体の運営方法、政治やメディアへの働きかけ方--。さまざまな団体の活動を見学し、講習を受けた。

 ある病院の一角にある「イメージ・リカバリー・センター」で、末期がんの女性の例が紹介された。ここでは、患者がメーキャップなどの総合的なケアを受けられる。家族にも会いたがらなかった女性は、ケアを受けて容ぼうががらっと変わると「家族に会いたい」と言い、会った数日後に亡くなったという。自信を取り戻させた効果の大きさに、河野さんは感動した。

 米国で会った人は、自然に「アイ・アム・サバイバー」とあいさつした。河野さんには「私はがんを生き抜いてきたのよ」と誇りを持って言っているように聞こえた。日本でも3人に1人ががんになる時代なのに、まだそういう環境にはない。

   ◇  ◇

 河野さんは9年前まで、ごく普通の専業主婦だった。買い物以外はほとんど外出せず、通学する娘2人のためにおやつを作ったりした。がんになるなんて、想像もしなかった。

 だが、告知は突然やってきた。その日、風邪を引いた小学4年の次女と病院に行き、たまたま会った主治医に精密検査の結果を知らされた。帰りのバスで何を考えたか覚えていない。次女の手を握りしめ、何回も「痛い」と言われたことだけ覚えている。【根本毅】=つづく(月曜掲載)

   ■  ■

 河野さんが理事長を務めるNPO法人「乳がんサポートグループVOICE」は、月1回の勉強会や、メーキャップの講習会などを開催している。問い合わせは、080・1516・8168。ホームページはhttp://voice‐nyugan.net/

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 ご意見や情報提供は、毎日新聞おおさか支局(ファクス06・6346・8444、メールat‐osaka@mbx.mainichi.co.jp)まで。

毎日新聞 2008年5月5日 地方版

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