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【連載企画「闘う臨床医」】(3)病院がつぶれる (3/3ページ)
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病院がつぶれる−。それは地方の小さなまちに限ったことでない。
昨年3月末、大阪府忠岡町の公立忠岡病院(83床)も56年の歴史に終止符を打った。
16年度に始まった臨床研修制度で新人医師が研修先を自由に選べるようになり、医局の医師が減った大学病院が派遣医を引き揚げるようになった。このため医師不足が深刻化し、患者数も減少するという悪循環に陥った。院長自ら大学を回って医師確保に奔走したが、成果はなかった。閉院時には累積赤字が14億3800万円に膨らんでいた。
当時、病院の庶務担当だった男性職員(51)は「住民にはあきらめが漂っていた。自治体病院の役割は終わったのかもしれない」と振り返る。
町は今年1月、病院の建物・土地の売却先を公募した。泉大津市の医療法人や町内の医療関連会社など3者のグループが3億1800万円で落札した。今夏から内科や外科など4科の外来診療が始まる予定だ。
病院がつぶれると真っ先に影響を受けるのは患者とその家族だ。根室市で患者の家族から聞いた言葉が今も耳に残る。
「病院をなくすことは、刃物を使わないで人間を殺すようなもんだ」