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コラム地軸2008年05月06日(火)付 愛媛新聞

小児救急

 子どものかかりつけの小児科医が職場から近い。連休中のこちらの出勤日に出くわして「きょうはお休みですね」と声をかけたら、心配顔で「子どもさんどうかした?」。慌てて否定し、誤解を招いたあいさつを反省した▲
 そういえばと、夜中に呼び鈴を押して助けてもらったのを思い出した。常時スタンバイ状態の激務。頭が下がる。松山市の急患医療センターに駆け込むときも同じだ。やっとの仮眠をすぐ起こされても疲れたそぶり一つ見せぬ当直医に、心のなかで手を合わせることが何度あったか▲
 休日や夜、軽症でも救急外来に飛び込むのを「コンビニ受診」というらしい。身近で相談できず、すがる思いで―そんな親心もあろう。加えて昼間は仕事で行けないからという親も増えているとか。まさに二十四時間営業感覚▲兵庫県立柏原病院の小児科は昨春、近くの産科廃止による患者急増や医師不足で行きづまりつつあった。救ったのが地域の母親ら。急病時にどうしたらいいか、知識の普及に努め、コンビニ受診を激減させた。医療崩壊を食い止めた革命的住民運動と評される▲
 母親らは日ごろから感謝を伝えようとも呼びかけた。患者の理不尽なクレームはいまや医師が現場を去る一因。院内暴力も追いつめている。裏返せば、崩壊阻止の小さなカギは住民一人一人の手中にもあるということだろう▲
 この連休、小児救急にすがってありがたみを痛感した人もいよう。地域の医師を守る。そのことが子どもを守る。そう教えられる気がする。

   
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