2108.04.25
ﾌｧｲﾄ! 闘う君の唄を闘わないﾔﾂらが笑うだろう… 《改訂最終版》
ﾌｧｲﾄ! 闘う君の唄を闘わない奴らが笑うだろう…
ファイト! 闘う君の唄を闘わない奴らが笑うだろう
ファイト! 冷たい水のなかを震えながら昇ってゆけ
暗い水の流れに打たれながら魚たち昇ってゆく
光っているのは傷ついて剥がれかけた鱗が揺れるから
いっそ水の流れに身を任せ流れ落ちてしまえば楽なのにね
痩せこけてそんなに痩せこけて魚たち昇ってゆく
勝つか負けるかそれは分からない
それでもとにかく闘いの出場通知を抱きしめてｱｲﾂは海になりました
ファイト! 闘う君の唄を闘わない奴らが笑うだろう
ファイト! 冷たい水のなかを震えながら昇ってゆけ
あの魚たちの群れｷﾗｷﾗと海のなかの国境を越えていく
諦めという名の鎖を身を捩って解いていく…
中島みゆきと吉田拓郎の合作､｢ﾌｧｲﾄ!｣という唄の歌詞である｡
この唄を聴いて私は幾度､涙を流したか分からない｡実際の歌詞はもっと長い｡悔しい､辛い､悲しい少年や少女の思いが､それぞれのｼﾁｭｴｰｼｮﾝで綴られている｡私も歌詞に出てくる彼らのなかの1人だった…｡
悔しいから反抗した｡
辛いから泣いた｡
悲しいから闘った｡
闘うということがどういう意味か？私は自らの体験から学んだのだ｡本来なら､そんなもの学ぶ必要はない｡否､学びたくもないことだ｡しかし､生き抜くためには闘うしかなかった｡
そんな私を過去､多くの人間たちが嘲笑ってきた｡
｢ﾔｸｻﾞの息子が､ﾁｮｰｾﾝに何が出来るよ! 悔しかったら一人前に学校出て人並み以上に稼いでみな｡どうせﾁﾝﾋﾟﾗになるのがせいぜいだよ｣
｢ﾁﾋﾞが､かかってこいよ､ほーらﾁﾋﾞの癖に生意気に! 柔道だろうがﾌﾟﾛﾚｽだろうがやってこいよ｡いつでもﾌｸﾛにしてやるわ｣
｢口だけ達者でとうとう逃げ出した｡ｱｲﾂはそうやっていつも調子いいこといって都合が悪くなると逃げ出すんだよ｣
｢ﾍﾟﾝは暴力にもなる｡けどｵﾏｴのﾍﾟﾝなんか簡単に折ってやる｡ﾍﾟﾝでさえ握れないようにしてやるよ｡生意気いうのは100年早いんだよ｣
いまでも私を嘲笑うﾔﾂらは絶えない｡
だが､昔と違っているのは､誰も直接私の前で笑わないし､愚弄もしないということだ｡笑うﾔﾂらはいつも姿を隠し､必死になって見えないところから引きつったように笑うだけである｡
そういうのを世間では｢弱犬の遠吠え｣と呼ぶ｡
私は逃げも隠れもしない｡
東京豊島区池袋のMugenが私の本陣だ｡私を笑いたければ､悪口叩きたいならば､ｹﾝｶを売りたいならばMugenにくればいい｡
｢ﾌｧｲﾄ!｣は真実を歌っている｡
闘う人間の姿を､闘えない弱虫が笑うのだ｡心のなかは歪んだ劣等感に溢れている｡捻れたﾌﾟﾗｲﾄﾞにしがみつくことしか出来ない人間が､自身の惨めさを隠 そうと無我夢中に､闘う人間を笑うのだ｡それも想像を絶するほど陰湿に､そして陰険に…｡
しかし､闘う人間にとってはそんなもの痛くも痒くもない｡なにせ弱犬の遠吠えだ｡逆に､弱犬は闘う者から嘲笑を浴びることを知っているから､自らの卑屈 さを知っているから､尚更ﾔﾂらはムキになって闘う者を笑う｡
私は差別と偏見と蔑視の視線を大人たちから浴びながら､今日まで闘い続けてきた｡それだけは胸を張って断言出来る｡
不良､少年犯罪者というﾚｯﾃﾙを貼られた私は､T県ﾄｯﾌﾟの進学校に進み早稲田大学に入った｡誰か悔しかったら早稲田大学に入ってみたらええ! 死ぬ気で受験勉強してみいや｡ただのう､三瓶啓二や東孝が通った｢夜学｣は早稲田とはいわんよ｡夜学は早稲田の盲腸じゃけえ､近々廃学が決定しとるんよ､念のため｡
柔道も中途半端､極真空手は末席の末席のまた片隅を汚しただけの男に過ぎません｡でも､私を弱者呼ばわりしてﾊﾞｶにするならば､とりあえず極真会館(松井派か極真館)の黒帯を取ってから吠えろや! いつでも待ってますけえ｡
編集者だ､物書きといってもまだまだ出版界では｢ﾊｷﾀﾞﾒのような格闘技界の業界人｣としか見なされていない半端者です｡物書きとしてさえ認められていない未熟者です｡けど､そんな私を笑うならば1冊でもいいから本を出版してからいえや｡それも山田英司や家高康彦のように初版3000部なんちゅうのはﾒﾃﾞｨｱ､ﾏｽｺﾐとはいわんけえ｡それはﾐﾆｺﾐというんじゃ｡小島は1回の増刷だけでもそれ以上を刷りますけん｡
Mugen､Mugenといってもちっちゃなｶｽのような会社です｡ｽﾀｯﾌもせいぜい10人程度に過ぎません｡ﾃﾞｶい会社が本気になって潰そうと思えば簡単に跡形もなく消えてしまいそうな編集制作会社です｡でも､誰もそれは出来ません｡私たちは絶対に｢筋｣だけは通します｡道理を無視して筋を違える相手には､刺し違えても引きません｡
私の家は昔から貧乏でした｡親父は博徒ですから､銭の出入りは大きかったですが､家には殆ど残らなかったです｡何もかも母親が汗水流して働いて､世間から貧乏人と笑われながら昼も夜も働いて私を食べさせ､学校にいかせてくれました｡
でも､いまの私を､私の親を貧乏と笑う人間はいないはずです｡私は精一杯働いています｡私を揶揄するならば年収2000万円取ってからいってくれんさい｡
貧乏人に貧乏と笑われるいわれはありませんけえ｡
私が最も嫌う､そして軽蔑する人間は､偽善者､口先だけの綺麗事を並べ立てるﾔﾂ､そして｢悪｣に対して正面から闘えない臆病者､こういうﾔﾂらだ｡
芦原英幸は私にいった｡しつこいように繰り返した｡福昌堂を辞めて独立する際のことだ｡
｢ﾔｸｻﾞと呼ばれてもいいけん､絶対他人にﾅﾒなれたらいけん｣
｢他人に笑われるならば怖がられる方がずっとﾏｼや｡嫌われてもいいけん､笑われたりﾅﾒられたら許しちゃいけん｡徹底的に再起不能になるまで潰すん
や｡徹底的にや!｣
男なら闘わなくてはいけん!
たとえるならば盧山初雄も真の闘いを知っている｢漢｣だった｡
1995年4月｡極真会館は分裂し､三瓶啓二を筆頭に緑健児､増田章､三好一男､柳渡聖人ら10名を優に超える極真空手の猛者連中が総本部のﾛｯｸｱｳﾄを企てた｡しかし盧山はたった1人で彼らの前に立ちふさがった｡
｢やるなら全員かかってこい｡その代わり命の保障はしない｡俺の首を取るつもりでかかってこい｡空手じゃない､ｹﾝｶだ!｣
盧山の烈火の瞳の前に三瓶は女々しく俯き､全員足をﾌﾞﾙﾌﾞﾙと震わせながら黙して去った｡
これは実話である｡
松井章圭は…｡
この14年間､ある意味で独りで闘い続けてきた｡ｸｰﾃﾞﾀｰの際は過半数どころか40名を超える支部長が松井を否定した｡しかし松井は一歩も退くことな
く正々堂々と闘い続けてきた｡
私は断言する｡
たとえ敵が100人並び､銃やﾀﾞﾝﾋﾞﾗを構えていても､つまり自分が死ぬことが分かっていても松井章圭ならば絶対､闘いに挑むに違いない｡1人でも2人でも確実に道連れにして闘いながら死ぬことを選ぶだろう｡
何故なら､松井もまた自らの尊厳のために､闘うことの大切さを知り､実際に闘い続けてきた人間だからだ｡
ファイト! 闘う君の唄を闘わない奴らが笑うだろう
ファイト! 冷たい水のなかを震えながら昇ってゆけ
(了)
ファイト! 闘う君の唄を闘わない奴らが笑うだろう
ファイト! 冷たい水のなかを震えながら昇ってゆけ
暗い水の流れに打たれながら魚たち昇ってゆく
光っているのは傷ついて剥がれかけた鱗が揺れるから
いっそ水の流れに身を任せ流れ落ちてしまえば楽なのにね
痩せこけてそんなに痩せこけて魚たち昇ってゆく
勝つか負けるかそれは分からない
それでもとにかく闘いの出場通知を抱きしめてｱｲﾂは海になりました
ファイト! 闘う君の唄を闘わない奴らが笑うだろう
ファイト! 冷たい水のなかを震えながら昇ってゆけ
あの魚たちの群れｷﾗｷﾗと海のなかの国境を越えていく
諦めという名の鎖を身を捩って解いていく…
中島みゆきと吉田拓郎の合作､｢ﾌｧｲﾄ!｣という唄の歌詞である｡
この唄を聴いて私は幾度､涙を流したか分からない｡実際の歌詞はもっと長い｡悔しい､辛い､悲しい少年や少女の思いが､それぞれのｼﾁｭｴｰｼｮﾝで綴られている｡私も歌詞に出てくる彼らのなかの1人だった…｡
悔しいから反抗した｡
辛いから泣いた｡
悲しいから闘った｡
闘うということがどういう意味か？私は自らの体験から学んだのだ｡本来なら､そんなもの学ぶ必要はない｡否､学びたくもないことだ｡しかし､生き抜くためには闘うしかなかった｡
そんな私を過去､多くの人間たちが嘲笑ってきた｡
｢ﾔｸｻﾞの息子が､ﾁｮｰｾﾝに何が出来るよ! 悔しかったら一人前に学校出て人並み以上に稼いでみな｡どうせﾁﾝﾋﾟﾗになるのがせいぜいだよ｣
｢ﾁﾋﾞが､かかってこいよ､ほーらﾁﾋﾞの癖に生意気に! 柔道だろうがﾌﾟﾛﾚｽだろうがやってこいよ｡いつでもﾌｸﾛにしてやるわ｣
｢口だけ達者でとうとう逃げ出した｡ｱｲﾂはそうやっていつも調子いいこといって都合が悪くなると逃げ出すんだよ｣
｢ﾍﾟﾝは暴力にもなる｡けどｵﾏｴのﾍﾟﾝなんか簡単に折ってやる｡ﾍﾟﾝでさえ握れないようにしてやるよ｡生意気いうのは100年早いんだよ｣
いまでも私を嘲笑うﾔﾂらは絶えない｡
だが､昔と違っているのは､誰も直接私の前で笑わないし､愚弄もしないということだ｡笑うﾔﾂらはいつも姿を隠し､必死になって見えないところから引きつったように笑うだけである｡
そういうのを世間では｢弱犬の遠吠え｣と呼ぶ｡
私は逃げも隠れもしない｡
東京豊島区池袋のMugenが私の本陣だ｡私を笑いたければ､悪口叩きたいならば､ｹﾝｶを売りたいならばMugenにくればいい｡
｢ﾌｧｲﾄ!｣は真実を歌っている｡
闘う人間の姿を､闘えない弱虫が笑うのだ｡心のなかは歪んだ劣等感に溢れている｡捻れたﾌﾟﾗｲﾄﾞにしがみつくことしか出来ない人間が､自身の惨めさを隠 そうと無我夢中に､闘う人間を笑うのだ｡それも想像を絶するほど陰湿に､そして陰険に…｡
しかし､闘う人間にとってはそんなもの痛くも痒くもない｡なにせ弱犬の遠吠えだ｡逆に､弱犬は闘う者から嘲笑を浴びることを知っているから､自らの卑屈 さを知っているから､尚更ﾔﾂらはムキになって闘う者を笑う｡
私は差別と偏見と蔑視の視線を大人たちから浴びながら､今日まで闘い続けてきた｡それだけは胸を張って断言出来る｡
不良､少年犯罪者というﾚｯﾃﾙを貼られた私は､T県ﾄｯﾌﾟの進学校に進み早稲田大学に入った｡誰か悔しかったら早稲田大学に入ってみたらええ! 死ぬ気で受験勉強してみいや｡ただのう､三瓶啓二や東孝が通った｢夜学｣は早稲田とはいわんよ｡夜学は早稲田の盲腸じゃけえ､近々廃学が決定しとるんよ､念のため｡
柔道も中途半端､極真空手は末席の末席のまた片隅を汚しただけの男に過ぎません｡でも､私を弱者呼ばわりしてﾊﾞｶにするならば､とりあえず極真会館(松井派か極真館)の黒帯を取ってから吠えろや! いつでも待ってますけえ｡
編集者だ､物書きといってもまだまだ出版界では｢ﾊｷﾀﾞﾒのような格闘技界の業界人｣としか見なされていない半端者です｡物書きとしてさえ認められていない未熟者です｡けど､そんな私を笑うならば1冊でもいいから本を出版してからいえや｡それも山田英司や家高康彦のように初版3000部なんちゅうのはﾒﾃﾞｨｱ､ﾏｽｺﾐとはいわんけえ｡それはﾐﾆｺﾐというんじゃ｡小島は1回の増刷だけでもそれ以上を刷りますけん｡
Mugen､Mugenといってもちっちゃなｶｽのような会社です｡ｽﾀｯﾌもせいぜい10人程度に過ぎません｡ﾃﾞｶい会社が本気になって潰そうと思えば簡単に跡形もなく消えてしまいそうな編集制作会社です｡でも､誰もそれは出来ません｡私たちは絶対に｢筋｣だけは通します｡道理を無視して筋を違える相手には､刺し違えても引きません｡
私の家は昔から貧乏でした｡親父は博徒ですから､銭の出入りは大きかったですが､家には殆ど残らなかったです｡何もかも母親が汗水流して働いて､世間から貧乏人と笑われながら昼も夜も働いて私を食べさせ､学校にいかせてくれました｡
でも､いまの私を､私の親を貧乏と笑う人間はいないはずです｡私は精一杯働いています｡私を揶揄するならば年収2000万円取ってからいってくれんさい｡
貧乏人に貧乏と笑われるいわれはありませんけえ｡
私が最も嫌う､そして軽蔑する人間は､偽善者､口先だけの綺麗事を並べ立てるﾔﾂ､そして｢悪｣に対して正面から闘えない臆病者､こういうﾔﾂらだ｡
芦原英幸は私にいった｡しつこいように繰り返した｡福昌堂を辞めて独立する際のことだ｡
｢ﾔｸｻﾞと呼ばれてもいいけん､絶対他人にﾅﾒなれたらいけん｣
｢他人に笑われるならば怖がられる方がずっとﾏｼや｡嫌われてもいいけん､笑われたりﾅﾒられたら許しちゃいけん｡徹底的に再起不能になるまで潰すん
や｡徹底的にや!｣
男なら闘わなくてはいけん!
たとえるならば盧山初雄も真の闘いを知っている｢漢｣だった｡
1995年4月｡極真会館は分裂し､三瓶啓二を筆頭に緑健児､増田章､三好一男､柳渡聖人ら10名を優に超える極真空手の猛者連中が総本部のﾛｯｸｱｳﾄを企てた｡しかし盧山はたった1人で彼らの前に立ちふさがった｡
｢やるなら全員かかってこい｡その代わり命の保障はしない｡俺の首を取るつもりでかかってこい｡空手じゃない､ｹﾝｶだ!｣
盧山の烈火の瞳の前に三瓶は女々しく俯き､全員足をﾌﾞﾙﾌﾞﾙと震わせながら黙して去った｡
これは実話である｡
松井章圭は…｡
この14年間､ある意味で独りで闘い続けてきた｡ｸｰﾃﾞﾀｰの際は過半数どころか40名を超える支部長が松井を否定した｡しかし松井は一歩も退くことな
く正々堂々と闘い続けてきた｡
私は断言する｡
たとえ敵が100人並び､銃やﾀﾞﾝﾋﾞﾗを構えていても､つまり自分が死ぬことが分かっていても松井章圭ならば絶対､闘いに挑むに違いない｡1人でも2人でも確実に道連れにして闘いながら死ぬことを選ぶだろう｡
何故なら､松井もまた自らの尊厳のために､闘うことの大切さを知り､実際に闘い続けてきた人間だからだ｡
ファイト! 闘う君の唄を闘わない奴らが笑うだろう
ファイト! 冷たい水のなかを震えながら昇ってゆけ
(了)
2008.04.15
2008.04.12
告知//｢力なき正義は無能なり｣は無期限《冬眠》に入ります! (改訂版)
告知/｢力なき正義は無能なり｣は無期限《冬眠》します!
最近､痛切に思うことがあります｡｢物書き｣は自らの｢作品｣が全てであり､｢作品｣でこそ評価されるべきではないかと｡私も半端者とはいえﾌﾟﾛの物書きです｡つまり｢物を書いて｣日々の糧を得ているわけで､その意味では私の書く｢物｣は｢作品｣であると同時に｢商品｣なのです｡どれだけ人に賞賛される｢作品｣を書こうが､｢商品｣として売れなければ何の価値もない｡
出来うるならば内容&技巧的にも｢作品性｣が高く､また5万-10万部と売れる｢商品性｣もあるというのが望ましいのです｡しかし､少なくとも私たち(小島&塚本)は｢大山倍達正伝｣によって､この2つの物書きのﾌﾟﾛとしての｢債務｣を果たし得たと自負しています｡
そして現在､｢大山倍達正伝｣の続編的な｢大山倍達の遺言｣に取り組みながらも予定を大幅に遅れてしまっている状態です｡勿論､この原稿の遅れは､いまだにくすぶる｢極真空手界｣の合従連衡をｷﾞﾘｷﾞﾘまで見極めたいという意図もあったのは嘘偽りない事実です｡
しかし昨年末の極真会館､新極真会の世界選手権のあと､確かに表面には出ない水面下での重要な動きはあったものの､あとは組織的強弱の差が激しくなるだけと思われます｡特筆するならば､｢連合会｣系の道場の弱体化､存続の危機が増し､新極真会は薄皮が剥がれるように組織力が衰えていくでしょう｡当分は大きな動きはないと予測できます｡
ならば､そろそろ本腰を入れて原稿執筆に集中し､脱稿に向かって走らなければならない瀬戸際に私たちは追い込まれているのです｡
繰り返します｡私は端くれながらもﾌﾟﾛの物書きです｡｢物｣を書き､評価され､そして売れた印税が生活の糧となるのです｡
ならば､銭にならないﾌﾞﾛｸﾞのｺﾗﾑ執筆に時間を削り､｢薬｣にも｢毒｣にもならないｺﾗﾑを書くことにいったいどれだけの価値が､そして意味があるのか…､私はこの半年間､大いに悩んでいました｡
そもそも私が自らのﾌﾞﾛｸﾞを開設したのには2つの理由がありました｡
��｢大山倍達正伝｣の｢3人目の著者｣といわれる最大の協力者･宮田玲欧氏が主宰する掲示板に､私および｢正伝｣に対する質問や感想が殺到し､宮田氏を煩わせてしまったこと｡ならば私が自らこれらの声の｢窓口｣になろうと考えました(初期のうちは読者からのｺﾒﾝﾄも受け付けていました)｡
��｢大山倍達正伝｣によって私たちが長年夢見てきた新潮社からの出版･発売が現実になりました｡今後､ｽﾃｯﾌﾟｱｯﾌﾟの手段として､PR用に考えたのがこのﾌﾞﾛｸﾞでした｡
しかし､今の私はこのﾌﾞﾛｸﾞに意義を見い出すことが出来なくなってしまいました｡何度もいうように物書きは｢作品｣のみで評価されるべきです｡物書き自身が如何なる｢人間｣か? 如何なる思想を持ち､如何なる生活をしているのか…｡芸能人じゃあるまいし､自分を｢切り売り｣して､否､表現を変えるならば自分を｢ｱﾋﾟｰﾙ｣することに何の意味があるのか?
｢親父が博徒でした｣
｢貧乏で複雑な家庭環境でした｣
｢ｶﾞｷの頃は少年犯罪者扱いされてきました｣
｢柔道や極真空手を学んできました｣
｢某会という組織を主宰しています｣
…………
こんなことは物書きである自分がわざわざｱﾋﾟｰﾙすることではないのです｡たしかに格技･空手界という特殊なｼﾞｬﾝﾙに於いては､｢小島一志｣という人間への興味が意外に大きかったと見えて､ﾌﾞﾛｸﾞのｱｸｾｽはこの2年間で急激に増えました｡
現在､1日のｱｸｾｽが約2500-3000(livedoorでは｢延べ総数｣ではなく｢1端末計算方式｣を採用しているため､この数はﾌﾞﾛｸﾞを見ている人数に限りなく近いといえます)にもなりました｡多いときには､何と1万4000に達したこともあります｡これはもはや正常なｱｸｾｽではありません｡
嬉しいと思う反面､私はﾌｯとあることに気付いたのです｡｢小島一志｣という物書きのｲﾒｰｼﾞが､このﾌﾞﾛｸﾞによって固定されてしまうとﾏｽﾞいことになる! また､私たちは物書きとして格技･空手界という業界からの脱皮または脱出を望んでいるにもかかわらず､ﾌﾞﾛｸﾞの話題の大半が格技･空手関係という矛盾を抱えていることも､あるﾄﾗﾌﾞﾙをきっかけに思い知らされました｡
ならば結果的に､この私のﾌﾞﾛｸﾞは私自身をｽﾃﾚｵﾀｲﾌﾟ化し､ｽﾎﾟｲﾙするﾏｲﾅｽ効果を生んで仕舞いかねない…｡
ただ､そうはいっても2年間も続けてきたが故に､いつしか多くの読者(ﾌｧﾝ)がﾌﾞﾛｸﾞについてしまいました｡ｺﾗﾑの更新を毎日楽しみにしている人たちがいる｡多いときには1日に30近いﾒｰﾙをもらいました(平均10-15通)｡
しかし､やはり私は物書きなのです｡このﾌﾞﾛｸﾞによって､私はこれ以上､自分をｱﾋﾟｰﾙしたくない｡｢作品｣以外でのｲﾒｰｼﾞ視を望まない｡
｢小島一志｣は私の｢作品｣の中にのみ存在するのです｡｢私｣としての小島一志は､そこら辺に転がっている少々ｶﾞﾗの悪い一介の遊び人に過ぎません｡そんな｢私｣の小島を私はせっせとﾌﾞﾛｸﾞで売り込んできたことになるのです｡｢私｣の小島が仮にﾔｸｻﾞであれ右翼であれ､何者であろうが､それは作品とはなんにも関係ないのです｡
以上の理由でﾌﾞﾛｸﾞ｢力なき正義は無能なり｣は無期限の｢冬眠｣に入らせて頂きます｡｢凍結｣という無機的な言葉より｢冬眠｣の方が私には合っている気がします｡冬眠ですから､熊のように突然目を覚まして､何やら書き出すこともあるかもしれません｡特に｢告知｣的なものは今後も掲載するつもりです｡
とりあえず､私にとっての傑作選をﾌﾞﾛｸﾞには掲載していますが､それも今後､入れ替わることもあるでしょう｡
私は地下に潜ります｡私の｢義兄弟｣が集う某会とともに｢私｣的な目的のためにも…｡
そして､みなさんとは私たち(塚本は女房同然の一心同体です)の｢作品｣でお会いしましょう｡
いままでのご購読､ありがとうございます｡
…でも､たまには覗いてみて!
みなさん
元気で､元気で､元気で､とりあえず元気で!
願再会!
(了)
最近､痛切に思うことがあります｡｢物書き｣は自らの｢作品｣が全てであり､｢作品｣でこそ評価されるべきではないかと｡私も半端者とはいえﾌﾟﾛの物書きです｡つまり｢物を書いて｣日々の糧を得ているわけで､その意味では私の書く｢物｣は｢作品｣であると同時に｢商品｣なのです｡どれだけ人に賞賛される｢作品｣を書こうが､｢商品｣として売れなければ何の価値もない｡
出来うるならば内容&技巧的にも｢作品性｣が高く､また5万-10万部と売れる｢商品性｣もあるというのが望ましいのです｡しかし､少なくとも私たち(小島&塚本)は｢大山倍達正伝｣によって､この2つの物書きのﾌﾟﾛとしての｢債務｣を果たし得たと自負しています｡
そして現在､｢大山倍達正伝｣の続編的な｢大山倍達の遺言｣に取り組みながらも予定を大幅に遅れてしまっている状態です｡勿論､この原稿の遅れは､いまだにくすぶる｢極真空手界｣の合従連衡をｷﾞﾘｷﾞﾘまで見極めたいという意図もあったのは嘘偽りない事実です｡
しかし昨年末の極真会館､新極真会の世界選手権のあと､確かに表面には出ない水面下での重要な動きはあったものの､あとは組織的強弱の差が激しくなるだけと思われます｡特筆するならば､｢連合会｣系の道場の弱体化､存続の危機が増し､新極真会は薄皮が剥がれるように組織力が衰えていくでしょう｡当分は大きな動きはないと予測できます｡
ならば､そろそろ本腰を入れて原稿執筆に集中し､脱稿に向かって走らなければならない瀬戸際に私たちは追い込まれているのです｡
繰り返します｡私は端くれながらもﾌﾟﾛの物書きです｡｢物｣を書き､評価され､そして売れた印税が生活の糧となるのです｡
ならば､銭にならないﾌﾞﾛｸﾞのｺﾗﾑ執筆に時間を削り､｢薬｣にも｢毒｣にもならないｺﾗﾑを書くことにいったいどれだけの価値が､そして意味があるのか…､私はこの半年間､大いに悩んでいました｡
そもそも私が自らのﾌﾞﾛｸﾞを開設したのには2つの理由がありました｡
��｢大山倍達正伝｣の｢3人目の著者｣といわれる最大の協力者･宮田玲欧氏が主宰する掲示板に､私および｢正伝｣に対する質問や感想が殺到し､宮田氏を煩わせてしまったこと｡ならば私が自らこれらの声の｢窓口｣になろうと考えました(初期のうちは読者からのｺﾒﾝﾄも受け付けていました)｡
��｢大山倍達正伝｣によって私たちが長年夢見てきた新潮社からの出版･発売が現実になりました｡今後､ｽﾃｯﾌﾟｱｯﾌﾟの手段として､PR用に考えたのがこのﾌﾞﾛｸﾞでした｡
しかし､今の私はこのﾌﾞﾛｸﾞに意義を見い出すことが出来なくなってしまいました｡何度もいうように物書きは｢作品｣のみで評価されるべきです｡物書き自身が如何なる｢人間｣か? 如何なる思想を持ち､如何なる生活をしているのか…｡芸能人じゃあるまいし､自分を｢切り売り｣して､否､表現を変えるならば自分を｢ｱﾋﾟｰﾙ｣することに何の意味があるのか?
｢親父が博徒でした｣
｢貧乏で複雑な家庭環境でした｣
｢ｶﾞｷの頃は少年犯罪者扱いされてきました｣
｢柔道や極真空手を学んできました｣
｢某会という組織を主宰しています｣
…………
こんなことは物書きである自分がわざわざｱﾋﾟｰﾙすることではないのです｡たしかに格技･空手界という特殊なｼﾞｬﾝﾙに於いては､｢小島一志｣という人間への興味が意外に大きかったと見えて､ﾌﾞﾛｸﾞのｱｸｾｽはこの2年間で急激に増えました｡
現在､1日のｱｸｾｽが約2500-3000(livedoorでは｢延べ総数｣ではなく｢1端末計算方式｣を採用しているため､この数はﾌﾞﾛｸﾞを見ている人数に限りなく近いといえます)にもなりました｡多いときには､何と1万4000に達したこともあります｡これはもはや正常なｱｸｾｽではありません｡
嬉しいと思う反面､私はﾌｯとあることに気付いたのです｡｢小島一志｣という物書きのｲﾒｰｼﾞが､このﾌﾞﾛｸﾞによって固定されてしまうとﾏｽﾞいことになる! また､私たちは物書きとして格技･空手界という業界からの脱皮または脱出を望んでいるにもかかわらず､ﾌﾞﾛｸﾞの話題の大半が格技･空手関係という矛盾を抱えていることも､あるﾄﾗﾌﾞﾙをきっかけに思い知らされました｡
ならば結果的に､この私のﾌﾞﾛｸﾞは私自身をｽﾃﾚｵﾀｲﾌﾟ化し､ｽﾎﾟｲﾙするﾏｲﾅｽ効果を生んで仕舞いかねない…｡
ただ､そうはいっても2年間も続けてきたが故に､いつしか多くの読者(ﾌｧﾝ)がﾌﾞﾛｸﾞについてしまいました｡ｺﾗﾑの更新を毎日楽しみにしている人たちがいる｡多いときには1日に30近いﾒｰﾙをもらいました(平均10-15通)｡
しかし､やはり私は物書きなのです｡このﾌﾞﾛｸﾞによって､私はこれ以上､自分をｱﾋﾟｰﾙしたくない｡｢作品｣以外でのｲﾒｰｼﾞ視を望まない｡
｢小島一志｣は私の｢作品｣の中にのみ存在するのです｡｢私｣としての小島一志は､そこら辺に転がっている少々ｶﾞﾗの悪い一介の遊び人に過ぎません｡そんな｢私｣の小島を私はせっせとﾌﾞﾛｸﾞで売り込んできたことになるのです｡｢私｣の小島が仮にﾔｸｻﾞであれ右翼であれ､何者であろうが､それは作品とはなんにも関係ないのです｡
以上の理由でﾌﾞﾛｸﾞ｢力なき正義は無能なり｣は無期限の｢冬眠｣に入らせて頂きます｡｢凍結｣という無機的な言葉より｢冬眠｣の方が私には合っている気がします｡冬眠ですから､熊のように突然目を覚まして､何やら書き出すこともあるかもしれません｡特に｢告知｣的なものは今後も掲載するつもりです｡
とりあえず､私にとっての傑作選をﾌﾞﾛｸﾞには掲載していますが､それも今後､入れ替わることもあるでしょう｡
私は地下に潜ります｡私の｢義兄弟｣が集う某会とともに｢私｣的な目的のためにも…｡
そして､みなさんとは私たち(塚本は女房同然の一心同体です)の｢作品｣でお会いしましょう｡
いままでのご購読､ありがとうございます｡
…でも､たまには覗いてみて!
みなさん
元気で､元気で､元気で､とりあえず元気で!
願再会!
(了)
2007.12.20
矢沢永吉･日本武道館ﾗｲﾌﾞ/走り続けるｽｰﾊﾟｰｽﾀｰに泣いた…(完全版)
2007年12月18日…
俺は泣いた!
C.E･YAZAWA-CLUB
矢沢永吉のｿﾛﾃﾞﾋﾞｭｰ32年目｡
58歳になる矢沢の日本武道館､通算101回目となるｺﾝｻｰﾄﾗｲﾌﾞに行ってきた｡
かつて矢沢さんは言った｡
｢歳をとることって単に細胞が老けることじゃなく､魂が老けるってこと｡魂が生き生きしていれば歳なんて関係ない!｣
言葉に出来ない程､感動的なｽﾃｰｼﾞだった…｡
この数年､年末の日本武道館ﾗｲﾌﾞは必ず観続けてきた｡だが今年は例年と様子が違っていた｡観客も開演前から緊張感に満ちていた｡
最近､会場にはいわゆる｢ﾔﾝｷｰｽﾀｲﾙ｣の客が減り､多彩な年齢層の人たちが足を運んでくるようになった｡特に今年は｢普通の｣若い青年や女性､女子高生のｸﾞﾙｰﾌﾟが目立った｡女性客が全体の約20％はいただろう｡昔はほぼ100％､ｶﾞﾗの悪い野郎たちだった｡
｢矢沢の音楽はｵﾏｴらﾜﾙのものじゃない｡ﾔﾝｷｰ姿の人間､ｱﾙｺｰﾙ臭いﾔﾂらは会場に入れない｡矢沢の音楽､歌を純粋に聴きたい人だけに来てほしい｡ﾏﾅｰが悪い連中は摘み出す!｣
矢沢さんの長年のﾒｯｾｰｼﾞがかたちになったのだ｡ﾛｯｸﾝﾛｰﾙが流れ出すと一斉に立ち上がり､全員でｼﾞｬﾝﾌﾟしながら拳を振り上げて｢永ちゃんｺｰﾙ｣が渦を巻く｡だが矢沢さんがｽﾛｰﾊﾞﾗｰﾄﾞやﾐﾃﾞｨｱﾑｿﾝｸﾞを唄い出すと､全員例外なく行儀よく着席して小声で歌を口ずさむ｡それが暗黙のうちに ﾙｰﾙ化しているのだ｡
矢沢永吉のｶﾘｽﾏ性がよく表れている｡
超満員の日本武道館｡
約12000人が立錐の余地もなく席を埋めた｡開演前から､私は熱気に煽られ､ｺｰﾄを脱ぎ捨て､さらにﾄﾚｰﾅｰも脱いでTｼｬﾂ姿になった｡開演5分前､一部の観客が｢永ちゃんｺｰﾙ｣を煽動すると会場は嵐のような永ちゃんｺｰﾙに包まれた｡
既に60歳近い矢沢永吉が左右の袖までの約100ﾒｰﾄﾙを全力疾走してｼｬｳﾄする｡ﾏｲｸﾀｰﾝが決まる｡一切の声のﾌﾞﾚも声量の衰えもない｡約2時間半､殆どMCを入れず､ひたすら25曲を唄い続けた｡
今回のﾃｰﾏは｢THE REAL｣
70年代のﾋｯﾄﾅﾝﾊﾞｰを中心に矢沢さんは熱唱した｡
あまりに懐かしい楽曲の連続に私は思わず､家高とﾔﾝﾁｬをしていた学生時代を思い出した｡よく家高とこの日本武道館に来たものだ｡音楽を聴くためではない｡ｹﾝｶが目的だった｡
やはり矢沢永吉は日本No.1のｽｰﾊﾟｰｽﾀｰであった｡
1万人を超える観客が一体になって矢沢さんの一挙手一投足を見つめる｡声を枯らして応援し､矢沢さんとともに唄う｡左右前後､気がついたらみんな仲間に なっていた｡
なんて素晴らしい光景だろう!
ﾗｽﾄで絶唱する｢ﾄﾗﾍﾞﾘﾝﾊﾞｽ｣｡
E.YAZAWAのﾛｺﾞが入った黄色い飛行船が会場をｸﾞﾙｸﾞﾙ回る｡ｺﾝｻｰﾄはｸﾗｲﾏｯｸｽに達した｡
《ﾄﾗﾍﾞﾘﾝﾊﾞｽ》
ﾙｲｼﾞｱﾅ､ﾃﾈｼｰ､ｼｶｺﾞ､遥かﾛｽｱﾝｾﾞﾙｽまできつい旅だぜ､おまえに分かるかいあのﾄﾗﾍﾞﾘﾝﾊﾞｽに揺られて暮らすのは
若いおまえはﾛｯｸﾝﾛｰﾙに憧れ
生まれた街を出るというけど
その日暮らしがどんなものなのか､分かっているのかい
ﾙｲｼﾞｱﾅ､ﾒﾝﾌｨｽ､ｼﾞｮｰｼﾞｱ､きつい旅だぜﾆｭｰｵﾘﾝｽﾞ
………………
ｱﾚﾝｼﾞとｱﾄﾞﾘﾌﾞを含みながら延々と10分間も走り続け､そして唄い続けた｡
Mugenを設立して19年になる私は､特にこの1年は未曽有の不景気と､また物書きとしての挫折感や屈辱感に打ちひしがれた｡会社を畳もうかとまで真剣に考えたこともある｡
辛い1年だった｡
それが頭に浮かぶと､涙が止まらなくなった｡
汗にまみれた涙が…｡
たった数10ﾒｰﾄﾙ前にいる矢沢さんなのに､永遠にたどり着けない絶望的な距離に感じられた｡
｢ﾄﾗﾍﾞﾘﾝﾊﾞｽ｣にはｿﾛﾃﾞﾋﾞｭｰ当時､万全の自信で出したｱﾙﾊﾞﾑ｢ILOVE YOU.OK｣が売れず､さらに挑戦した名盤｢A DAY｣もﾋｯﾄに繋がらず､約2年間､全国150ヵ所を超えるﾗｲﾌﾞﾂｱｰを回ったときの矢沢永吉の苦節の魂が籠もった歌である｡
矢沢永吉にも食えなく辛い時期があったのだ｡ｷｬﾛﾙを解散し､すでにｽｰﾊﾟｰｽﾀｰと呼ばれるようになった後でさえ､矢沢さんは何度も苦難に直面し､戦い続けてきた｡
｢ﾄﾗﾍﾞﾘﾝﾊﾞｽ｣が今日ほど身近に感じたことはない｡
ｿﾛﾃﾞﾋﾞｭｰから2年後の1977年､再挑戦したｻｰﾄﾞｱﾙﾊﾞﾑ｢ﾄﾞｱをあけろ｣で絶大な支持を得た矢沢さんは日本人ｱｰﾃｨｽﾄとして初の日本武道館で記念すべき第1回ｺﾝｻｰﾄﾗｲﾌﾞを敢行した｡次いで翌年は後楽園球場に5万人の観客を集めて歴史に残る大成功を収めていく…｡
しかし､あの矢沢さんだって正味3年間の挫折を味わっているのだ｡そのときのあらゆる魂が｢ﾄﾗﾍﾞﾘﾝﾊﾞｽ｣に詰まっている｡
のちに矢沢さんは語る｡
｢1回目は散々な目に合う｡でも2回目でｹｼﾞﾒをつける｡そうすれば3回目は余裕…｣
私と塚本が作った｢大山倍達正伝｣は自分たちでも最高傑作だと自負している｡あらゆる一流のﾒﾃﾞｨｱからも絶賛された｡しかし…｡私たち物書きのﾒｼﾞｬｰな世界に足を踏み入れたものの､所詮｢格闘技というﾏｲﾅｰな世界の業界人｣というﾚｯﾃﾙを乗り越えることは出来なかった｡ﾒｼﾞｬｰの世界は想像以上に厳しかった｡
次回作の｢大山倍達の遺言｣が､矢沢さんが言う2回目になるかどうかは分からない｡またさらに控えている作品が真の意味での2回目の挑戦になるかも分からない｡
だが､私は矢沢さんの後を追い続けてきた｡私の｢夢｣は矢沢永吉である｡
ｺﾝｻｰﾄのほぼ真ん中で矢沢さんは｢MARIA｣を唄った｡
これは今の矢沢さんを支えてくれている奥様に捧げた歌だ｡会場の盛り上がりが一際激しくなった｡誰もがMARIAに秘められた意味を知っているからだ｡
《MARIA》
MARIA 褪せた写真に微笑むおまえがいるよ
眩しく激しいときを､その笑顔が走らせたのさ､あの日の俺を
MARIA 近すぎたから､強がる2人だったよ
運命の絆を解いて人は､愛に気づくよ
MARIA その微笑み､走らせるのさ､明日の俺を
………………
この楽曲は私にとっては塚本佳子のための歌である｡
歌詞通り､私は側に塚本がいてくれたからMugenをやり続けられたし､今も執筆に専念出来る｡塚本がいないMugenも自分自身も､もはや有り得ない｡
人間は､否､男は弱い動物でしかない｡1人では何にも出来ない｡矢沢さんはMARIAがついていてくれたからこそ､幾多の困難や挫折を乗り越えて日本ﾛｯｸ界のｽｰﾊﾟｰｽﾀｰに､ｶﾘｽﾏになり得たのである｡
ならば私には塚本がいる｡
いつか､いつの日か､矢沢永吉の足元に及ぶ存在になる｡ならなくてはならないのだ｡
余談だが､私と一心同体､以心伝心の仲にもかかわらず､塚本は｢矢沢さんには興味ない｣と日本武道館に足を運ぼうとしない｡まだ彼女が20代前半だった頃､｢私はｷｬﾛﾙも矢沢さんも好きですよ｣と言っていた｡少女時代に憧れたﾁｪｯｶｰｽﾞが矢沢さんを尊敬していると公言していることに触発されたと言った｡
だが今の塚本は頑なだ｡
何でも私とｲｺｰﾙであることに不快な反発があるのだろう｡しかし､塚本は私にとって大切なMARIAである｡
来年こそ､大志と3人で日本武道館にいきたいと心底思った｡
とにかく今回の矢沢永吉の日本武道館は最高だった｡最近､涙脆いのか直ぐに涙が零れてならない｡でも泣くだけの価値はあった｡
私の場合､矢沢さんのﾗｲﾌﾞを見てｽﾄﾚｽ発散や｢頑張るんだ!｣というｴﾈﾙｷﾞｰを得ることはない｡
私と矢沢さんとの間にある何万段という階段を少しでも登れたかどうかを確認する場なのだ｡そして今年はさらに距離を離された思いにある面､打ちひしがれてもいる｡
それでも頑張る｡
矢沢さんが60になれば私も50になる｡まだまだ攻撃は止めない｡行き倒れでもいいから前を向いて死ぬのだ｡畳の上や病院のﾍﾞｯﾄﾞの上なんかで死ぬものか!
そんなことを矢沢永吉は改めて私に教えてくれた｡
(了)
俺は泣いた!
C.E･YAZAWA-CLUB
矢沢永吉のｿﾛﾃﾞﾋﾞｭｰ32年目｡
58歳になる矢沢の日本武道館､通算101回目となるｺﾝｻｰﾄﾗｲﾌﾞに行ってきた｡
かつて矢沢さんは言った｡
｢歳をとることって単に細胞が老けることじゃなく､魂が老けるってこと｡魂が生き生きしていれば歳なんて関係ない!｣
言葉に出来ない程､感動的なｽﾃｰｼﾞだった…｡
この数年､年末の日本武道館ﾗｲﾌﾞは必ず観続けてきた｡だが今年は例年と様子が違っていた｡観客も開演前から緊張感に満ちていた｡
最近､会場にはいわゆる｢ﾔﾝｷｰｽﾀｲﾙ｣の客が減り､多彩な年齢層の人たちが足を運んでくるようになった｡特に今年は｢普通の｣若い青年や女性､女子高生のｸﾞﾙｰﾌﾟが目立った｡女性客が全体の約20％はいただろう｡昔はほぼ100％､ｶﾞﾗの悪い野郎たちだった｡
｢矢沢の音楽はｵﾏｴらﾜﾙのものじゃない｡ﾔﾝｷｰ姿の人間､ｱﾙｺｰﾙ臭いﾔﾂらは会場に入れない｡矢沢の音楽､歌を純粋に聴きたい人だけに来てほしい｡ﾏﾅｰが悪い連中は摘み出す!｣
矢沢さんの長年のﾒｯｾｰｼﾞがかたちになったのだ｡ﾛｯｸﾝﾛｰﾙが流れ出すと一斉に立ち上がり､全員でｼﾞｬﾝﾌﾟしながら拳を振り上げて｢永ちゃんｺｰﾙ｣が渦を巻く｡だが矢沢さんがｽﾛｰﾊﾞﾗｰﾄﾞやﾐﾃﾞｨｱﾑｿﾝｸﾞを唄い出すと､全員例外なく行儀よく着席して小声で歌を口ずさむ｡それが暗黙のうちに ﾙｰﾙ化しているのだ｡
矢沢永吉のｶﾘｽﾏ性がよく表れている｡
超満員の日本武道館｡
約12000人が立錐の余地もなく席を埋めた｡開演前から､私は熱気に煽られ､ｺｰﾄを脱ぎ捨て､さらにﾄﾚｰﾅｰも脱いでTｼｬﾂ姿になった｡開演5分前､一部の観客が｢永ちゃんｺｰﾙ｣を煽動すると会場は嵐のような永ちゃんｺｰﾙに包まれた｡
既に60歳近い矢沢永吉が左右の袖までの約100ﾒｰﾄﾙを全力疾走してｼｬｳﾄする｡ﾏｲｸﾀｰﾝが決まる｡一切の声のﾌﾞﾚも声量の衰えもない｡約2時間半､殆どMCを入れず､ひたすら25曲を唄い続けた｡
今回のﾃｰﾏは｢THE REAL｣
70年代のﾋｯﾄﾅﾝﾊﾞｰを中心に矢沢さんは熱唱した｡
あまりに懐かしい楽曲の連続に私は思わず､家高とﾔﾝﾁｬをしていた学生時代を思い出した｡よく家高とこの日本武道館に来たものだ｡音楽を聴くためではない｡ｹﾝｶが目的だった｡
やはり矢沢永吉は日本No.1のｽｰﾊﾟｰｽﾀｰであった｡
1万人を超える観客が一体になって矢沢さんの一挙手一投足を見つめる｡声を枯らして応援し､矢沢さんとともに唄う｡左右前後､気がついたらみんな仲間に なっていた｡
なんて素晴らしい光景だろう!
ﾗｽﾄで絶唱する｢ﾄﾗﾍﾞﾘﾝﾊﾞｽ｣｡
E.YAZAWAのﾛｺﾞが入った黄色い飛行船が会場をｸﾞﾙｸﾞﾙ回る｡ｺﾝｻｰﾄはｸﾗｲﾏｯｸｽに達した｡
《ﾄﾗﾍﾞﾘﾝﾊﾞｽ》
ﾙｲｼﾞｱﾅ､ﾃﾈｼｰ､ｼｶｺﾞ､遥かﾛｽｱﾝｾﾞﾙｽまできつい旅だぜ､おまえに分かるかいあのﾄﾗﾍﾞﾘﾝﾊﾞｽに揺られて暮らすのは
若いおまえはﾛｯｸﾝﾛｰﾙに憧れ
生まれた街を出るというけど
その日暮らしがどんなものなのか､分かっているのかい
ﾙｲｼﾞｱﾅ､ﾒﾝﾌｨｽ､ｼﾞｮｰｼﾞｱ､きつい旅だぜﾆｭｰｵﾘﾝｽﾞ
………………
ｱﾚﾝｼﾞとｱﾄﾞﾘﾌﾞを含みながら延々と10分間も走り続け､そして唄い続けた｡
Mugenを設立して19年になる私は､特にこの1年は未曽有の不景気と､また物書きとしての挫折感や屈辱感に打ちひしがれた｡会社を畳もうかとまで真剣に考えたこともある｡
辛い1年だった｡
それが頭に浮かぶと､涙が止まらなくなった｡
汗にまみれた涙が…｡
たった数10ﾒｰﾄﾙ前にいる矢沢さんなのに､永遠にたどり着けない絶望的な距離に感じられた｡
｢ﾄﾗﾍﾞﾘﾝﾊﾞｽ｣にはｿﾛﾃﾞﾋﾞｭｰ当時､万全の自信で出したｱﾙﾊﾞﾑ｢ILOVE YOU.OK｣が売れず､さらに挑戦した名盤｢A DAY｣もﾋｯﾄに繋がらず､約2年間､全国150ヵ所を超えるﾗｲﾌﾞﾂｱｰを回ったときの矢沢永吉の苦節の魂が籠もった歌である｡
矢沢永吉にも食えなく辛い時期があったのだ｡ｷｬﾛﾙを解散し､すでにｽｰﾊﾟｰｽﾀｰと呼ばれるようになった後でさえ､矢沢さんは何度も苦難に直面し､戦い続けてきた｡
｢ﾄﾗﾍﾞﾘﾝﾊﾞｽ｣が今日ほど身近に感じたことはない｡
ｿﾛﾃﾞﾋﾞｭｰから2年後の1977年､再挑戦したｻｰﾄﾞｱﾙﾊﾞﾑ｢ﾄﾞｱをあけろ｣で絶大な支持を得た矢沢さんは日本人ｱｰﾃｨｽﾄとして初の日本武道館で記念すべき第1回ｺﾝｻｰﾄﾗｲﾌﾞを敢行した｡次いで翌年は後楽園球場に5万人の観客を集めて歴史に残る大成功を収めていく…｡
しかし､あの矢沢さんだって正味3年間の挫折を味わっているのだ｡そのときのあらゆる魂が｢ﾄﾗﾍﾞﾘﾝﾊﾞｽ｣に詰まっている｡
のちに矢沢さんは語る｡
｢1回目は散々な目に合う｡でも2回目でｹｼﾞﾒをつける｡そうすれば3回目は余裕…｣
私と塚本が作った｢大山倍達正伝｣は自分たちでも最高傑作だと自負している｡あらゆる一流のﾒﾃﾞｨｱからも絶賛された｡しかし…｡私たち物書きのﾒｼﾞｬｰな世界に足を踏み入れたものの､所詮｢格闘技というﾏｲﾅｰな世界の業界人｣というﾚｯﾃﾙを乗り越えることは出来なかった｡ﾒｼﾞｬｰの世界は想像以上に厳しかった｡
次回作の｢大山倍達の遺言｣が､矢沢さんが言う2回目になるかどうかは分からない｡またさらに控えている作品が真の意味での2回目の挑戦になるかも分からない｡
だが､私は矢沢さんの後を追い続けてきた｡私の｢夢｣は矢沢永吉である｡
ｺﾝｻｰﾄのほぼ真ん中で矢沢さんは｢MARIA｣を唄った｡
これは今の矢沢さんを支えてくれている奥様に捧げた歌だ｡会場の盛り上がりが一際激しくなった｡誰もがMARIAに秘められた意味を知っているからだ｡
《MARIA》
MARIA 褪せた写真に微笑むおまえがいるよ
眩しく激しいときを､その笑顔が走らせたのさ､あの日の俺を
MARIA 近すぎたから､強がる2人だったよ
運命の絆を解いて人は､愛に気づくよ
MARIA その微笑み､走らせるのさ､明日の俺を
………………
この楽曲は私にとっては塚本佳子のための歌である｡
歌詞通り､私は側に塚本がいてくれたからMugenをやり続けられたし､今も執筆に専念出来る｡塚本がいないMugenも自分自身も､もはや有り得ない｡
人間は､否､男は弱い動物でしかない｡1人では何にも出来ない｡矢沢さんはMARIAがついていてくれたからこそ､幾多の困難や挫折を乗り越えて日本ﾛｯｸ界のｽｰﾊﾟｰｽﾀｰに､ｶﾘｽﾏになり得たのである｡
ならば私には塚本がいる｡
いつか､いつの日か､矢沢永吉の足元に及ぶ存在になる｡ならなくてはならないのだ｡
余談だが､私と一心同体､以心伝心の仲にもかかわらず､塚本は｢矢沢さんには興味ない｣と日本武道館に足を運ぼうとしない｡まだ彼女が20代前半だった頃､｢私はｷｬﾛﾙも矢沢さんも好きですよ｣と言っていた｡少女時代に憧れたﾁｪｯｶｰｽﾞが矢沢さんを尊敬していると公言していることに触発されたと言った｡
だが今の塚本は頑なだ｡
何でも私とｲｺｰﾙであることに不快な反発があるのだろう｡しかし､塚本は私にとって大切なMARIAである｡
来年こそ､大志と3人で日本武道館にいきたいと心底思った｡
とにかく今回の矢沢永吉の日本武道館は最高だった｡最近､涙脆いのか直ぐに涙が零れてならない｡でも泣くだけの価値はあった｡
私の場合､矢沢さんのﾗｲﾌﾞを見てｽﾄﾚｽ発散や｢頑張るんだ!｣というｴﾈﾙｷﾞｰを得ることはない｡
私と矢沢さんとの間にある何万段という階段を少しでも登れたかどうかを確認する場なのだ｡そして今年はさらに距離を離された思いにある面､打ちひしがれてもいる｡
それでも頑張る｡
矢沢さんが60になれば私も50になる｡まだまだ攻撃は止めない｡行き倒れでもいいから前を向いて死ぬのだ｡畳の上や病院のﾍﾞｯﾄﾞの上なんかで死ぬものか!
そんなことを矢沢永吉は改めて私に教えてくれた｡
(了)