■先日、日本の本を国内で紹介している中国人翻訳家夫妻と一緒に、マジアミというチベット料理店で食事をした。チベット伝統歌舞ショーがある北京の有名店だが、私たち以外に、2組の客しかいなかった。オーセルさんの指摘するように、事件の影響で客足が遠のいているようだ。北京の漢族には、昨今のチベットブームの影響もあって、チベット仏教の信仰を始めている人も結構いるが、「ここにきて、チベット仏教などについて話すとよからぬことを相談していると誤解を受ける」ことを恐れて、あえて近づかないようにしている人が多いとか。
■ちなみに、こういったチベットレストランや商店では、怪しげなチベット族、僧侶、事件のことや敏感な問題を尋ねる客があれば、すぐ通報するように、という通達がいっているという。ウエイトレスの女性に、「あなたの故郷(彼女の故郷はアバだった)はどう?ご家族は大丈夫?」などと、敏感な質問をしみると、なんとも言えない表情で「大丈夫よ(没事的)」と答えていた。
■このあと、ほとんど客のいないホールで、陽気にチベット民謡を歌い踊ってみせてくれた。実際に本当に楽しげに踊っているように見えたので、北京では、ほとんど現地の情報が入らないし、本当に何も知らずに踊りを楽しんでいるのだろうか、と思ったほどだ。しかし、帰り際に、着替えて奥のテーブルで休んでいる歌手や踊り手の疲れて暗い表情をかいまみると、たとえ故郷の家族が無事であったとしても、客の入りの悪さや、チベット族に対する漢族の感情の悪化だとかをひしひしと感じているのだろうなあ、と切なくなった。こういう時にも、プロは明るく楽しくおどらなきゃいけないのか、と。
■と、どうでもいいまくらをつけてしまったが、続けてオーセルさんのブログを抄訳。23日~25日。ダライ・ラマ14世の全世界華人同胞への呼びかけが最後にあります。
■4月23日
■チベット族とチベット族居住区をさらにコントロールするため、最近、ラサ市城関区を管轄する各事務所および各居民委員会は、管轄区内のすべての住人の調査を行った。ラサ戸籍をもつほとんどの者が対象で、このときラサ戸籍をもたない外来者は登記が必須となった。登記では、家主と住人は必ず関連の証明書と身分証明書、暫定居住証明書などを提示し、家主は住人に対し「三つの知る」を保障する。「三つの知る」とは「姓名を知る、原籍を知る、何をしているか知る」である。また、「三無人員」(身分証がない、居住証がない、生活費の源泉である仕事などがない人)に対しては厳格な調査を行う。「チベット商報」によれば、この手続きには2時間かかり、実際、外地のチベット族は漢族や回族のように簡単には暫定居住証が出ないという。寺院で教典などを勉強するアムド、カムのチベット族僧侶を駆逐するのが目的という。
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■ 4月18日金曜午前4時ごろ、ラサ市曲水公安局と自治区の特別警察は、ラサ市西南30キロのところにある聶当卓瑪拉康(11世紀に建立された仏殿)で突然の逮捕行動を行い、寺院内の数人の僧侶を拘束した。聶当卓瑪拉康には大量の貴重な文物があるので、もっか曲水県の幹部が派遣され、僧侶の変装をして、ルーティンで監視している。
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■4月18日、中国共産党の張慶黎チベット自治区書記は、デプン寺とセラ寺に赴いた。その夜のチベットテレビ局のニュース報道によれば、「寺院駐留の法制宣伝教育工作チームの全幹部と寺院管理委員会メンバーおよび僧侶代表の近しい座談会」を見にいったという。このとき、チベット族は影で、張(書記)がチベットで「たとえ千人ころしても一人も逃してはならない」というやり方を展開していることに非常に不満をもち、体制内の大部分のチベット族も恐れ不安におののき、また非常に怒って、影で張書記を痛罵していたという。
■実際、張(書記)が3・14事件の対応において主要な責任が任されていた。体制内の多くの当局側に立つチベット青年ですら、この事件後の弾圧の酷さ、中国メディアのウソつきぶり、各地で出現しているチベット族排斥現象に対して、驚きおびえ、落胆し、ついには当局に背いて、当局に対し強烈な対立感情を燃やすようになっている。またダライ・ラマがこの3・14事件と関係がなく無辜であると思っている。つまり、中国共産党は少しも反省せず、誤ったチベット政策を継続し、すでに多くのチベット族の民心をますます失っているのである。
■ある情報によれば、今月12日、ラサ市の墨竹工卡県の邦薩寺、卓瑪寺の僧侶と曲竜尼姑寺の若い尼僧らと付近の村民が西崗郷で当局の「愛国主義教育」活動に抵抗し、「ダライ・ラマ万歳」「チベットに自由を」などと叫んでいたところ、地もと軍警の鎮圧にあい、数住人が逮捕され、多くが重傷をおった。この夜、曲竜的尼姑寺の洛桑措姆という尼僧が首を吊って自殺。31才だった。
■チベット地域で展開されている「愛国主義教育」運動で、当局は寺院の屋根に中国国旗を掲げることを要求しているほか、さらに僧侶に五星紅旗のしたで、ダライ・ラマと決別することを宣誓するように要求。ひどい場合、寺院のすべての僧侶の手に五星紅旗を持たせて写真やビデオを撮影し、写真の空白のところに署名させたりしている。しかし多くの僧侶が非協力的な態度だった。
■北京では一部チベット族出稼ぎ者が辞職させられ、失業したチベット族が次々故郷に帰っている。
■4月24日
■チベット日報は「ダライ分裂集団の反動的本質をあばき批判する一連の評論」を立て続けに発表した。これはダライ・ラマを「チベット社会の全ての動乱の根源」と攻撃し、中国共産党当局はチベット政策の過ちを反省せずに、責任をすべてダライ・ラマに押し付けたことを表明したもので、その文章は、文革式の古くさい言葉にあふれている。
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■五輪聖火がラサに入る期間、ラサは厳戒態勢がとられ、5月1日から域内の出入境が厳しくなる。ラサの各当局機関では、職員に対しては職業身分証明書のコピーと証明写真、普通の人に対しては戸籍証明書のコピーと証明写真を提出して通行証が与えられる。小学生ですら、通行証が必用だ。幼稚園の園児や幼稚園に上がっていない幼児も登記が必用。
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■4月25日
■中国メディアの報道によると4月23日から、国内観光客のチベット旅行が解禁となった。また5月1日から、チベット鉄道の切符は、身分証名称を示し、実名登記して買うことになった(飛行機と一緒)。切符の横流しを防ぐためだ。チベット旅行するならツアーがもっともよく、単独旅行や小規模のツアーでいくと、身分証明証を常に携帯せねばならないという。チベット当地の環境は比較的複雑だからという。北京のある旅行会社によれば、目下、チベット旅行をしようという中国人は決して多くなく、旅行者は旅行解禁といってもあまり期待をいだいておらず、突発事件による損失の方を恐れている。
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■このことに対し、チベット地域外のチベット族は中国共産党が協議を行うと決定した、あるいは双方にとってよいことだ、あるいは全チベットの悪劣なこの局面が転換されるという希望持っている。だが、域内のチベット族は、これは中国共産党の五輪のために放った煙幕弾である可能性が強いとみており、英国、フランス、米国などの国が中国との間に生じる自己利益の損失を防ぐため、水面下で交渉した結果とみている。
■中国共産党がもし本当に誠意をもっているなら、ラサおよびそのたチベット地域の情勢は好転のきざしが見られるべきだ。しかし、もっかチベット地域の漢族を含め、そうなっていないとみている。軍は増員され続けており、新聞およびテレビは猛烈なダライ・ラマ批判を続けている。各政府機関は大小の「反分裂」会議を開き、各寺院のは公安や警察による工作チームが「法制宣伝教育活動」の名目で、僧侶にダライ・ラマ批判を強要し続けている。これに従わないものは、「孤立と攻撃」が与えられる。
■もし、広大なチベット族の苦境が改善されないなら、もし3・14事件に対してまじめな反省と責任追及が行われないなら、もし、チベット族に本当の自治権が与えられず、全チベット統治政策が改変されないのなら、これは中国共産党の「ダライ側は実際的行動をもって祖国分裂活動を停止し、暴力活動の扇動画策を停止し、北京五輪の破壊妨害活動を停止し、対話を行うための条件をつくれ」という声を満足させるだけであり、中国が表面的に国際世論を受け入れる振りを示しているにすぎず、いわゆる「接触協議は」むしろなんの意義もない!
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■きのう(24日)、ダライ・ラマは全世界の華人同胞に以下のように呼びかけた:
仏教がインドからチベットに伝わる前に、まず中国に伝わった。だから、われわれは華人の同門修行の方々をより長く学んできた先輩として尊敬してきた。あなた方の多くが知るように、今年3月10日からラサと多くのチベット地域で抗議デモが発生した。これら事件が、中国政府のチベット政策に対するチベット族の深い不満によって引き起こされたものである。私は当時、犠牲となったチベット族と漢族のために深い悲嘆にくれた。私はすぐに中国当局とチベット族に己を抑制するように呼びかけ、特にチベット族には暴力の道に走ってはならないと呼びかけた。
多くの国際的な指導者、非政府組織、著名人、とくに多くの中国知識人は、中国政府に対し、抑制的な方法をとるように呼びかけたにもかかわらず、極めて不幸なことに、中国当局は残虐暴力的な手段をとり、この事件の過程で多くの人が命を失い、傷を負い、さらに多くの人が逮捕され、弾圧はつづいている。とくに、伝統的な仏教知識の宝庫である寺院が主要な弾圧の対象になり、多くの寺院がすでに封鎖されている。
信用できる情報によれば、少なからぬ人たちが山に逃げ込んでいるが、彼らは食糧や衣服が不足し、家もなく、家に残してきた家族がいつ逮捕されるかどうか恐れながら、終日恐怖の中で、まさに苦痛と深い不安にさいなまれている。
これら事件は最終的にどういった方向に向かうのか、私は憂慮と不安を深く感じている。私はこれまでも努力して言い続けているが、弾圧が妥当に問題を解決できると思わないし、長く安定した統治という目的を達成できるとも思わない。私が堅く信じるのは、チベット族と中国指導者の間で対話を通じて問題を解決するのが、前進できる最も優れた方法なのだ。
私はかつて何度も、中華人民共和国の指導者に申し入れしてきた。私にはチベットの分離独立の意図はなく、私たちが求めているのは、仏教文化、言語を文字などチベット族の特性を長期的に保存し発展させるために、全チベット族人民が実質的意義のある自治を有することだけである。
豊かな仏教文化は中華人民共和国は博大な文化の一部であり、華人兄弟姉妹に利する力がある。だから、私はここで、呼びかけたい。どうか、あなた方も中国政府に、今行っている残虐な暴力的弾圧を即刻停止し、逮捕されたすべての人を釈放し、傷ついた人に医療を受けられるようにと、督促してほしい。
一切の吉祥をねがって!
釈迦比丘、14世ダライ・ラマ、丹增嘉措
西暦2008年4月24日
by red-bean38
アンチCNNに紹介されました…