国際競争力が我が国の経済政策上の重要な概念となっている。国際競争力のキーは技術競争力であり、技術競争力を測る指標の一つとして技術貿易の状況をあげることができる。 技術水準の動向をみるため欧米に対する技術の輸出入の推移を追うことにする。ここで技術の輸出入とは「外国との間におけるパテント、ノウハウや技術指導などの技術の提供、技術の受け入れにともなう対価の受入と支払」をいう。 欧米に対する技術依存度を指標化するため、技術貿易について、輸入から輸出を引いた額を輸出入の合計で割った値を算出した。輸入だけで輸出がない場合は、技術依存度100%となり、逆に、輸入がなく、輸出だけの場合、技術依存度-100%となる。 (これは、輸出入から国際競争力を指標化する「貿易特化係数」と輸出と輸入逆であるが同様の指標算出法である。ところが、技術貿易については、OECDなど外国での指標算出法の影響を受けてであろうが、技術輸出÷技術輸入の指標を「技術貿易収支比」と名づけ使用するのが一般的である。例:文部科学省「科学技術白書」「科学技術指標」。これだと1以下であると技術依存状態、1以上であると技術輸出超過となるが、グラフにしてみると余り分かりやすくない。) 日本の全産業について、欧米だけでなく世界全体に対する2005年度の輸出総額は2兆283億円、輸入額は7,037億円であり、1兆3,246億円の輸出超過である。上の技術依存度は-48.5%となる。輸入超過から輸出超過に転じたのは、1993年度であり、それ以降、輸出額の伸びが輸入額の伸びを大きく上回り続けたので、マイナス5割弱という高い逆技術依存となった。 1990年代前半は、工場進出にともなうアジアへの技術輸出の拡大が主たる要因となっていたが、その後、90年代後半からは北米(米国中心)に対しても技術輸出額が大きく伸びたためこうした逆依存の状況が生じている。2005年度段階では、技術輸出の51.2%は北米であり、アジア(西アジアを除く)が30.6%、ヨーロッパが14.2%となっている。 欧米に対する技術依存の状況が長期的にどう変化してきたかを見るため、図では、北米と欧州に対する製造業の技術貿易状況の推移を示した。製造業に限定したのは、技術の中心が製造業であるのと全産業ベースであると調査範囲についてソフト等に産業の範囲が拡大してきている要因を除去するためである。 北米に対して、製造業全体では1970年代前半には依存度80〜90%と全面依存の状況にあったが、その後、技術依存度を一貫して低下させてきており、1997年度には、依存(輸入超過)から逆依存(輸出超過)に転換している。さらにこの傾向はその後も継続し2005年度も-41%と対世界全産業と同様の水準の状態を保っている。 欧州に対しては、ほぼ、北米と同様の推移を辿っている。依存から逆依存に転換してのも北米と同じ1997年度である。ただし、出発点の依存度は北米より小さかったが、近年では、逆依存の状況は北米より大きくない。 業種ごとの推移は図録5800を参照のこと。 (2007年8月13日更新) |
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