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社説:こどもの日 大人はもっとお節介になろう

 15歳未満の子供は27年連続で減り、人口に占める割合は34年連続で低下している。どの子も社会全体で守る宝、の思いを強くすべきだろうが、現実に私たちはどれほど目を凝らし見守っているだろう。今ネット問題が象徴的だ。

 今年、文部科学省は初めて「学校裏サイト」の調査をした。児童生徒や卒業生らが情報のやりとりなどをするインターネット上の掲示板やブログ。匿名発信者が特定人物を中傷し、いじめの温床に転じると指摘されている。昨年、高校生が自殺する事件も起きた。

 調査は3万8260件の裏サイトを確認。抽出調査で半数に中傷表現、3割近くに「死ね」「殺す」など直接的暴力表現があった。

 また先月、千葉県で自己紹介をし合う「プロフィルサイト」(プロフ)で14歳の男子中学生と17歳の少年が悪口の応酬をし、初対面の場で少年が中学生をバットで殴打する殺人未遂事件が起きた。ともすれば言葉が過激になり、憎悪を誘い、感情を抑制できず、現実と見境がつきにくくなる。ネット交信の落とし穴がのぞいたような事件だ。

 1990年代から情報教育は広がり、パソコンが学校にも普及する一方、携帯電話が子供たちの世界に定着した。学校ではパソコンの操作や活用法だけでなく、適正に使いこなす力(リテラシー)や不正に使わない情報モラルを教えるが、指導がどう行われ、効果があるのかは見えにくい。

 というより、ネットを使いこなす力や人を中傷しないというモラルは、情報教育以前の基本的な社会ルールで、指導は日常行われていなければならない。いじめや中傷がどう人を傷つけ、陰であざけることがいかに卑怯(ひきょう)か、をである。

 大人が子供を犯罪に引き込むサイトも後を絶たず、携帯電話会社は18歳未満には有害認定のサイトに接続できなくする「フィルタリングサービス」を始めた。自主基準や規制法案づくりも検討されている。

 ただ、速く、広く、多いというネット情報の技術や利便性は進化し続け、抑えきれないだろう。学校や保護者はこまめなネット巡視でチェックし、また管理者も責任をもって注視し、有害と判断したら学校などに通報して取り除く。子供たちとモラルを語り合うとともに、そんな丁寧な積み重ねが重要だ。家庭、学校、地域が有害サイトから子供を守るという共通決意と仕組み、そして手間をかけることだ。

 小さくとも不正は看過しない、という「お節介」な姿勢をきちんと子供に見せる。子供の事件や非行防止策でよくいわれる手段だが、子供を有害ネットから守ることにも通じる。

 子供たちはますますネットを身近に成長し、生涯ともに歩む。将来の健やかな情報社会を築くためにもこの問題は先送りできない。

毎日新聞 2008年5月5日 東京朝刊

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