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みどりの日

 「日本の山が緑なのは、日本の自然は特別で、植物ことに木が多いということの表れなんですね」。「金田一先生が語る日本語のこころ」(学習研究社)で、金田一春彦さんは日本人と木の関係の深さを指摘する。そのため、木に関するたくさんの言葉が生まれたとも話している。

 例えば「木だち」「木かげ」「並木」「木の下闇」「木漏れ日」。いずれもきれいな言葉だ。

 季語の「山笑う」から「山滴る」へ、山々は緑の濃さを増し生命力あふれる季節になった。森へ出掛け深呼吸すると体の中まで緑に染まり、力がみなぎる気分になろう。

 内閣府が昨年行った「森林と生活に関する世論調査」によると「森林に親しみを感じる」人の割合は91・5%に達した。前回二〇〇三年調査に比べ3・5ポイント増えた。

 きょうは「みどりの日」だ。森を一層身近に感じたい。

心の荒廃に衝撃

 最近、悲しいニュースが続く。各地で市民らが大切に育てている花や木が折られたり引き抜かれたりする被害が起きている。

 福岡県大牟田市では、桜の名所の諏訪公園で、桜の木など多数が被害に遭った。桜の見ごろを狙ったとみられる。のこぎりで切り倒された若木もあった。到底許されない。

 パンジーやチューリップなど、美しい花の盛りに切り取られたりもしている。近くの園児たちが植えたり、ボランティアが手入れをしたりしていたのに、善意が踏みにじられた。

 福山市では四月下旬、公園で育てられていた被爆アオギリの被害が見つかった。広島市の爆心地近くで被爆したアオギリの種から育った苗木を、市民団体が核廃絶の願いを込めて植樹していた。十数本が引き抜かれたり折られたりした。市民団体の代表は「平和の願いを込めたアオギリにこんなひどいことをする、その心が悲しい」と嘆く。

 花や木を傷つけることは命を粗末にすることであり、育てる人たちの思いに対する想像力を欠く行為だ。犯人の心の荒廃に衝撃を受ける。

世代間に大きな差

 先の「森林と生活に関する世論調査」では、「森林に親しみを感じる」と答えたうち「非常に」の割合を年齢別に見ると、六十―六十九歳が64・2%と最も高かった。続いて七十歳以上、五十―五十九歳、四十―四十九歳の順だ。

 二十―二十九歳は28・2%にとどまっていた。三十―三十九歳は37・0%である。中高年と大きな差が出た。「親しみを感じない」との答えは、二十―二十九歳だけが一割を超え、15・3%を占めた。

 温暖化が進み、地球環境の悪化が心配される。森林は温暖化の主要な原因である二酸化炭素を吸収し、重要性への認識が広がる。それでも、若い世代の森林に対する親しみが中高年に比べて少ないのは、森林の本当の素晴らしさを実感した経験が乏しいからではないだろうか。

 せっかくキャンプへ行っても森の散策を楽しむのではなく、あるいは、静かに谷川のせせらぎや鳥の声に耳を澄ます人が少ないといわれる。自然の魅力に浸らず、眺める程度の付き合いではもったいない。

かかわり深めて

 里山という言葉を広め、森林生態学の創始者といわれる四手井綱英さんに聞き書きした「森の人 四手井綱英の九十年」(森まゆみ著、晶文社)は、森とどうかかわっていけばいいのか教える。強調するのは、子どものころから自然に接する大切さだ。

 「子どもは学校から帰るとすぐ塾に行ってしまうか、テレビしか見ない。家の中でゲームをするのではねえ。いまの子どもたちは生き物のいない世界に住んでいる」。さらに続けて、大人は直接に自然保護を教えようとするが、その前に自然そのものを教えなければいけないという。

 「机の上で雄しべだ雌しべだ、これが落葉樹だなんて教えてもあかん。モノの実際を見せて、まずは花そのものを見てきれいだな。色、形、手ざわり、どんなところに生えているか、それが大事です」

 自然を守ろうと声高に叫んでみても、自然の美しさ、不思議さ、奥深さへの感動がなければ机上の空論になりかねない。みどりの日に森の中で五感を研ぎ澄まそう。


(2008年5月4日掲載)
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