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2008年5月4日

◎北陸の森づくり 環境税効果を目に見える形で

 石川県が昨年度から導入した「いしかわ森林環境税」による森づくり事業について、そ の成果をできるだけ早く、目に見える形で県民に示してもらいたい。もちろん、森づくりは長い年月をかけて効果が確認できる事業であり、即効性は見えにくいが、導入の際には、国の税制改正などで重税感が高まる中での増税ということで、県議会などから時期尚早との慎重論も出た経緯がある。それだけに、同環境税を活用した事業への県民の理解と参加を促す意味でも、具体的な「環境税効果」をアピールする必要があろう。

 いしかわ森林環境税は、県民税均等割に個人は五百円、法人は均等割額の5%を上乗せ するもので、年間三億八千万円程度の税収を見込み、同環境税を財源に創設した「いしかわ森林環境基金」から、九割を手入れ不足の人工林の整備に、一割を普及啓発などのソフト事業に充てている。県内の手入れ不足林は約二万二千ヘクタールあり、昨年度はこのうち千三百ヘクタールで同基金による森林整備計画が進められたが、まだまだ先は長いとの印象は否めない。

 こうした取り組みを補完する意味で、先に県内の地元企業などが県と協定を結び、県有 林を利用して間伐や植樹に乗り出したことに注目したい。これを足がかりに、ゆくゆくは手入れ不足が深刻化している民有林のほうでも、基金を活用しながら「企業市民」として山林の整備に取り組む企業を増やしていきたい。

 実際に山林の保水力向上や土砂災害防止効果が出てくるのは先のこととしても、林業関 係者以外の幅広い県民が森づくりに参加することで、継続的に森林保護を実践していく人的基盤の形成という成果を示せるのではないか。

 同環境税は五年間実施した上で見直しも検討されるが、今年度にその効果を検証する第 三者の評価委員会を設ける予定だ。これと合わせて、ソフト面も含め、環境税導入からの取り組みの成果を総合的に紹介する機会を設けても良いのではないか。一人五百円とはいえ、せっかく県民から税金を求めて実施したものだけに、納得の行く実績を示したい。

◎北朝鮮の核情報公開 米政権は功を焦るまい

 米国は先ごろ、北朝鮮がシリアの原子炉建設を支援していたとの情報を公開した。北朝 鮮が六カ国協議の当面の焦点である核計画の申告を完全、正確に行うよう圧力をかけることが大きな狙いである。北朝鮮はこれまでシリアに対する核協力を全面否定してきたが、そうした主張はもはや通らなくなった。と同時に米国自身もこの情報開示に縛られ、北朝鮮の玉虫色の申告でテロ支援国家指定を解除するといった安易な妥協が許されなくなったと認識してもらいたい。

 停滞する六カ国協議に関連して、米報道官が最近、次期政権に持ち越される可能性に言 及したことが注目される。ブッシュ政権下で北朝鮮の核廃棄をめざす方針を軌道修正した発言とも受け取れるが、そのことを必ずしも悲観的にとらえる必要はあるまい。ブッシュ大統領の任期中の解決を急ぐあまり、あいまいな政治決着に走ると北朝鮮の思うつぼにはまることにもなりかねない。功を焦らないようブッシュ政権に望みたい。

 昨年十月の六カ国協議では、北朝鮮の核廃棄に向けた第二段階措置として、寧辺の三核 施設の「無能力化」と「すべての核計画の完全かつ正確な申告」を昨年末までに完了することで合意した。この第二段階措置の見返りに、テロ支援国家指定を解除するというのが米政府の方針である。

 しかし、核施設を無能力化する燃料棒抜き取り作業は大幅に遅れ、「完全かつ正確」と 認められる核計画の申告もまだ行われていない。米側が申告を求めるシリアへの核協力とウラン濃縮計画について、北朝鮮は「考えたこともない」と否定し続けている。

 気掛りは米側の融和姿勢で、四月の米朝協議では、ウラン濃縮と核拡散疑惑について、 双方が都合よく解釈できる玉虫色の表現を申告の付属文書に盛り込むことで暫定合意したと伝えられる。もしそうであれば、北朝鮮ペースにはまる危うさが否めない。そうした暫定合意を認めない米政府高官もおり、現在の対北朝鮮融和路線をめぐり米政府内で意見が割れていることをうかがわせる。


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