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【連載企画「闘う臨床医」】(2)医療は裁けるか (2/2ページ)
あの悲劇から5年後。日本の医療界を震撼(しんかん)させる事件が再び起きた。
福島県立大野病院(同県大熊町)で16年12月、帝王切開手術を受けた女性=当時(29)=が大量出血により死亡した。県警は18年、「癒着胎盤」を無理にはがしたとして業務上過失致死と医師法違反容疑で、執刀した産婦人科医の加藤克彦医師(40)を逮捕した。
加藤医師の逮捕は医療関係者に衝撃を与えた。「難しい症例で、医師の過失を問うのは不当だ」との抗議が各地の医師会や学会などから相次ぎ、医療事故が疑われる死亡事例を公平な立場で究明する「医療事故調」創設をめぐる動きのきっかけにもなった。
それだけではない。全国の病院で診療から撤退する動きが広がり、産科医不足にも拍車をかけた。
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2年前、近畿地方のある診療所で分娩(ぶんべん)にからむ事故が起きた。30代の女性は出産時に合併症を起こして一時意識不明になり、仮死状態で生まれた男児も脳に障害を負った。
担当したのは40代の男性医師だった。臨床経験15年以上のベテランだったが、事故後、女性の家族から医療ミスを疑われ、執拗(しつよう)に罵倒された。
医師は何度も女性や家族に謝罪し、合併症の危険性や出産時のリスクを説明した。だが聞き入れてもらえず、女性は約1年後、医師らを相手取り損害賠償を求める訴訟を起こした。
「これ以上、迷惑をかけれない」。この医師は今、勤務先を辞めようと考えている。ただ女性にはどうしても分かってほしいことがある。
「医療とは不確実なものであるということを」(白岩賢太)