被害者に落ち度はなく、防ぎようもなかった。二十五日夜、JR岡山駅で男性公務員がホームから突き落とされ、電車にはねられ死亡した。容疑者はまたも若者だ。何が無差別殺人に走らせるのか。
容疑者の少年(18)は、ホームから突き落とされた男性とは面識がなく「誰でもよかった」と供述しているという。理不尽な無差別殺人というしかない。二十三日に茨城県土浦市のJR荒川沖駅で無職男(24)が八人を殺傷する事件が起きたばかりだ。この男も「誰でもよかった」と供述している。
どちらも人が行き交う駅が現場だ。被害者は容疑者と運悪く遭遇したにすぎない。遺族のやり切れない心情は察するにあまりある。惨劇の連鎖発生を食い止めねばならない。
少年は「誰か人を刺してやろうと思っていた。人を殺せば刑務所に行ける。(ホームの)一番前の人の背中を押した」といい、ナイフを持っていた。土浦事件での凶器は包丁とナイフだった。今年一月には東京都品川区の商店街で高校生が包丁で通行人二人を切る事件があった。
たまたま前にいた人を突き落とす。見ず知らずの人に切りつける。被害者は生身の人間であり、家族もいる。どの犯行もためらいが感じられず、人への感情も欠如している。
少年はおとなしい性格だったという。「キレる」という言葉だけでは説明できない。識者からは「土浦事件の影響」とか「自暴自棄的な犯行だ」といった見方が出ている。不条理な事件を防ぐ手だてを考えるためにも少年の心理分析を進めたい。
少年は大阪府大東市で両親などと四人暮らし。土浦事件の男も両親や弟妹などと暮らしており、両容疑者とも同居する家族はいた。
土浦事件の男は高校を卒業してからアルバイトをしていたが、今年一月に辞めてからは自宅に引きこもりがちだったという。ゲームに熱中し、家族とほとんど会話せず、一緒に食事することもなかったようだ。孤立していた様子がうかがえる。
少年は大阪府立高校を卒業したばかりで、大学への進学も就職も決まっていなかったという。そのまま「ニート」(若年無業者)となる可能性があった。事件当日朝、家出しており、両親から捜索願が出されていた。
引きこもりやニートの増加は深刻な社会問題となっている。そんな傾向を若者の凶悪事件と直接結び付けるのは性急だろうが、家族の崩壊、若者たちの孤立を放置するわけにはいかない。社会全体の取り組みで対策を急ぎ練らないと、毎日が危険と隣り合わせになってしまう。
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