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文藝評論

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小林多喜二著『「蟹工船」』

以下の記事を読み、ちょっと驚いた。

敗戦直後の若い労働者や大学生諸君は、ほとんどこの秀作を読んでいたのではなかったか。このことが戦後の60年安保闘争までの若き情熱として持続された。

私は高校生のときに読み、資本主義社会の労働者の姿とはこういうものかと理解した。この思いはいまも変わらないが、労働者文学については志賀直哉が小林多喜二の筆力を評価しつつも党派性を批判したことは、小林よりもずっと未熟な労働者文学には当たっていると考えている。

『蟹工船』と葉山嘉樹の『海に生くる人々』はリアルな描写とダイナミックなリズム感、社会性の洞察が鋭く、労働者文学の秀作である。

青空文庫に最近収録されたのか、見付かったので急いで電子本に収録した(編集途上)。

以下の記事はいまの労働環境が敗戦直後から60年代の状況を物語っているのだろう。動あれば反動あり、自公政権は安穏と無策を貪っておれなくなる。

「蟹工船」再脚光…格差嘆き若者共感、増刷で売り上げ5倍
 プロレタリア文学を代表する小林多喜二(1903〜1933)の「蟹工船(かにこうせん)・党生活者」(新潮文庫)が、今年に入って“古典”としては異例の2万7000部を増刷、例年の5倍の勢いで売れている。

 過酷な労働の現場を描く昭和初期の名作が、「ワーキングプア」が社会問題となる平成の若者を中心に読まれている。

 「蟹工船」は世界大恐慌のきっかけとなったニューヨーク株式市場の大暴落「暗黒の木曜日」が起きた1929年(昭和4年)に発表された小説。オホーツク海でカニをとり、缶詰に加工する船を舞台に、非人間的な労働を強いられる人々の暗たんたる生活と闘争をリアルに描いている。

 文庫は1953年に初版が刊行され、今年に入って110万部を突破。丸善丸の内本店など大手書店では「現代の『ワーキングプア』にも重なる過酷な労働環境を描いた名作が平成の『格差社会』に大復活!!」などと書かれた店頭広告を立て、平積みしている。(5月2日15時13分配信 読売新聞)
小林多喜二 【こばやし・たきじ】
小説家。明治36年10月13日〜昭和8年2月20日。秋田県北秋田郡下川沿村川口に生まれる。学生時代から小説を書き始め、志賀直哉の手法を熱心に学ぶ。大正15年頃、葉山嘉樹やゴーリキーなどの作品を通じてプロレタリア作家としての自覚を持ち、特に蔵原惟人の理論的影響を受ける。「一九二八年三月十五日」(昭和3)、「蟹工船」(昭和4)により作家としての地位を確立、この二作は海外にも翻訳され、優れた革命作家として国際的にも広く名を知られた。昭和6年10月、非合法の共産党に入党、翌年より地下活動に入る。昭和8年2月20日、赤坂で逮捕され、築地署で特高の拷問により殺害される。享年29歳。この虐殺に対し、ロマン=ロラン、魯迅をはじめ内外の進歩的文学者、諸団体の追悼と抗議が広くおこった。戦時下の八年間は、小林の作品集を所持しているだけで検挙の理由にされたという。代表作は「一九二八年三月十五日」、「蟹工船」、「不在地主」、「工場細胞」、「党生活者」など。
 小樽商業を抜群の成績で卒業すると、親戚からの補助出費で小林は高等商業に進んだ。当時の彼は、学業にいそしむ傍ら、文学、絵画、音楽、映画の芸術部門の多方面に渡つて趣味をもち、同好の学生たちとグループを作つて、盛んに研究してゐた。
 その当時のことを、弟の三吾君――ヴイオリンをやつてゐる――に聞かう。彼は『兄多喜二を語る』(人物評論四月号)の中で次のやうに述べてゐる。
「兄は文学のほかに絵も好きで、学生時代には油絵を描いてゐました。よくあちらこちらへ出かけては、風景を描いたり家で静物を描いたりしてゐました。二料会の中村善策氏などその頃の絵友達でした。しかし絵の方は「絵かきにロクな奴はない。」といつて叔父に叱られてからは、やめてしまひました。
 その後専ら文学を志すやうになつたのですが、文学も商業学校時代から好きで、その頃から小説を書き出してゐます。兄は(中略)好んで浮売窟や貧民窟を描いてゐました。
 昔書いた小説に、独身者が夜電灯を下げて虱をとつてゐる場面を描写したものがありますが、友人達が「小林の虱小説」といつて兄をからかつてゐたことを憶えてゐます。」
 これを見ても解るやうに、小林の趣味は結局文学に落着いた。そして当時彼は「バルザツクやストリンドベリーが好きだつた」と三吾君が述べてゐるが、私が小林自身から直接聞いたのでは、その他にトルストイとドストイエフスキーやチエホフ等も可成り読んでゐたやうである。
 彼が親んだ外国作家の範囲は、その他にも可成り広く亘つてゐたやうである。アンドレ・ジツトにも心を引かれた時代があつたとも聞いてゐる。
 日本の作家では、小林は――いまは誰もが知つてゐるやうに――志賀直哉に傾倒してゐた。(立野信之「同志小林多喜二伝」昭和8年5月)
小林多喜二
http://www.geocities.jp/ki1ta2/kobayasi.html

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