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米国の金融危機の構造

2008年05月03日

 サブプライムローン問題を契機として、米国は金融危機に見舞われた。その背景には、海外から流入する資本によって米国に過剰流動性が発生し、あらゆる資産価格が高騰してきたことがある。さらに、金融慣行の変更がいくつかあった。

 第一に、手元流動性の意味が変わった。もともとは現金や当座預金などの換金性の高い資産所有であったが、クレジットライン(与信枠)など負債調達に置き換えられた。いつでも自由に借り入れができるので、利子がつかない現金や当座預金を所有することは非効率、という考え方に取って代わられた。

 第二に、借金の元本と金利を、個人なら所得、企業なら利益から返済できるかどうかを審査する、いわば伝統的審査をやめてしまった。資産価格の上昇を前提に、貸手は審査に時間をかけず、資産を担保にとってどんどん貸し込んだ。そうすることが、資産の値上がりに貢献し、貸し出し債権の健全性が強固になったからである。たとえ借金の返済が滞っても、元本の借り換え、金利の借り増しに応ずることで債務不履行を避けられた。

 第三に、コマーシャルペーパー(CP)である。伝統的なCPは企業の売掛金や在庫など短期に現金化される資産に見合って発行される。従って期日までに企業の手元には元利支払いのための現金が用意される。ところが今では、回収が長期にわたる不動産を担保に、短期間の借り換えを繰り返すCPが発行されている。

 何かがきっかけとなり、誰かが現金での支払いを求めると大変なことになる。誰もが現金を用意していないことに気づき、借り手が銀行に殺到し、金融危機となるという次第だ。(岳)

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