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道路と命、どちらが大切ですか?−NPO法人医療制度研究会副理事長、本田宏医師 (2/3ページ)
その結果、現在日本の国民1人当たり医療費は先進国(G7加盟国)中最低(OECD Health Data 2005)である。
国内ではずっと医療費は高すぎる、無駄が多いと喧伝(けんでん)されてきたが、日本の病院が胃がんの手術(4週間入院)でもらえる総医療費は、せいぜい120万円(先進国中最低)程度。
これを高速道路の上り下り1キロおきに設置されている緊急電話1台が250万円(原価40万円)で設置されていることと比べれば、いかに日本の医療費が安いかは一目瞭然だ。
崩壊の第2の理由、それは医療費抑制のために政府が医師養成数まで抑制し、医師の絶対数が不足したからだ。
現在の日本の医師数26万人はOECD(経済協力開発機構)加盟国の人口当たり平均と比較すると、絶対数で12万人以上足りない。
しかもその26万人は実働数ではなく、90歳以上の超高齢者までカウントされているのだから、全国で医師が不足しているのは当然の帰結なのだ。
さて現場から見ればあまりにも遅きに失したが、福田首相が5月にも医師不足の緊急対策として、2008年度の診療報酬改定に伴う医師確保策(医師不足が深刻な病院診療科に対する1500億円の重点配分)を表明したらしい。しかし医療崩壊の背景となってきた長年にわたる低医療費と医師養成抑制策を抜本的に見直すことなしに、1500億円程度では「焼け石に水」で終わることは、疲弊した現場から見れば火を見るより明らかである。