町立病院の送迎バス(周防大島で。撮影:田中龍作)。「【山口・周防大島発】『後期高齢者医療やめろ』大合唱 保守崩壊の決定打か」(ザ・選挙)より。後期高齢者医療制度は、衆院山口2区補選でも大きな争点となった。
後期高齢者診療料とは?
厚労省は後期高齢者診療料の説明
2)を表1のように行っているが、とてもわかりにくい。同診療料については以前にも紹介したが
3)、改めてポイントをわかりやすく解説する。
・75才以上の人で、13の慢性疾患を「主病とする」外来患者さんだけが対象になります。
・患者さんが、同意した時だけ算定します。
診療所側にも条件があり、基準に適合し、届け出をした診療所では算定可能ですが、届け出をしていない診療所では、患者さんが希望しても算定できません。複数の主治医にかかっている時も算定できません(「主病ルール」)。
・料金は前払いの定額料金で、平均すると今までの27%減の料金になっています。
患者さんにとっては、ある時は損をして、ある時は得になるなど、掛け捨て保険に似た仕組みです。
・他院を受診する時に制限はありませんが、主治医間の医療連携を阻害する仕組みになっています。
・「2階に上げて、はしごを外す」システムです。
将来は、「主治医を1人に限定する登録人頭制度」の導入が検討されています。
医療連携を阻害する「主病ルール」
高齢者は複数の病気を同時に治療し主治医も複数いることが多い。主治医は専門的な知識と技術を生かして他の医師と連携しながら治療を行っている。そして、今までは傷病名が異なっていれば管理料の算定は複数の診療所で可能だった。
しかし、厚労省は同診療料の新設にあわせて3月5日の通知で突然「自院、他院を問わず」という文言を追加した。つまり、複数の病気を持っていても「主な病気はひとつ、主治医もひとり」という「主病ルール」を持ち出し、複数の診療所での管理料算定を認めない方針を明らかにした。高齢者には複数の主治医による連携した医療は必要なないといわんばかりの解釈だ。
患者さんには「ひとりの主治医」で我慢するように、医師には第2、第3の主治医を断るように、経済的に誘導しようとしている。
「主病ルール」のその後
その後、医療現場からの批判が相次ぎ、3月28日に出された事務連絡では、あっさり「自院、他院を問わず」が訂正・削除された。
これで「主病ルール」も白紙撤回されたと思われたが、原徳壽医療課長は4月4日にメディファックスの取材に応じ、「1人の患者の主病は医学的に1つに決まり、後期高齢者診療料をはじめ主病が要件になっている医学管理料は1つの医療機関でのみ算定できる」と述べ、「自院、他院を問わず」を削除したが、内容については一歩も引かない姿勢を明らかにした(表2)。
全国の多くの医師団体は、この記事によって、同診療料を「登録人頭制」
4)につながる制度、「2階に上げてはしごを外す」制度と判断し主治医制に反旗を翻した。
青森県保険医協会は青森県社会保険事務局に、複数の診療所、病院間での同診療料と特定疾患管理料について質問している。厚労省が明確な答えを出していないため青森県社会保険事務局では答えられず、4月28日現在、厚労省からは正式の回答はない。
厚労省はなぜ詳細に説明しないのか?
同診療料は医療費削減を目的とした時限爆弾ともいえる。レセプトオンライン化システム
5)がスタートする2010年に爆発するようにセットされた。
現在は診療報酬請求が紙で行われているため、たとえ「主病ルール」を明確にしても手作業でチェックするしか方法がないので、医療費削減効果はすぐに現れない。しかし、オンライン化されれば瞬時にチェック可能となり、医療費が削減できる仕掛けだ。
したがって、厚労省は「主病ルール」を今明らかにすることは反発を招くだけなので、2010年まで曖昧にしておいた方が良いと判断しているのかもしれない。
2010年に医療は崩壊する
これらの医療費削減の影響は診療所だけに限らず、200床未満の病院にも及ぶ。「主病ルール」による医療費削減は医師不足に悩む地域では医療崩壊への最後の一撃になることは間違いがない。
保険料凍結が解除されるのが2010年、診療所のオンライン化が2010年、窓口で10割を負担する資格証が多く発行されるのも2010年と、高齢者にとっては時限爆弾が爆発するまでの時間は迫っている。
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「厚労省の後期高齢者診療料(担当医)のQ&A」とそれへの反論」に続く)