韓国:戦死した朝鮮人特攻隊員の慰霊碑 黒田福美さん尽力

 【泗川(サチョン)=韓国南部=で堀山明子】歴史のはざまで日韓双方から置き去りにされた魂を慰めたい--。韓国通で知られる女優の黒田福美さんが、太平洋戦争で戦死した朝鮮人特攻隊員、卓庚鉉(タクキョンヒョン)さん(享年24)の本名を刻んだ慰霊碑を故郷、韓国・慶尚南道泗川市に建立し、命日前日の5月10日に除幕式を行う。

 卓さんは1945年5月の出撃前夜、朝鮮民謡アリランを歌い、知覧(鹿児島県)の基地から飛び立った。01年の映画「ホタル」のモデルになった人物だ。

 黒田さんは91年夏、「日本名で死んだのが残念だと訴える朝鮮人飛行士の夢を見た」という。それを機に朝鮮人の特攻隊員に関心を持ち、卓さんの存在を知った。数年前から慰霊碑用の土地を探したが、候補地周辺の住民から「うちにも(戦争の)犠牲がいるのに特攻隊員だけなぜ碑が建つのか」と反発があり、慎重に進めていた。

 雰囲気が変わったのは昨年9月、金守英(キムスヨン)市長(62)が泗川市の土地を提供する方針を決めてからだ。金市長は「慰霊碑が特攻隊を宣伝する趣旨ではないと知り、(犠牲者間の)住民の和解のためにも、市ができることをしようと考えた」と話す。

 黒田さん側も、卓さん個人の名前を前面に出さず、泗川市民全体の犠牲を悼む文言を碑文の冒頭に記すなど配慮を加えた。黒田さんは「地元住民が訪れ、日韓和解につながる平和の礎にしたい」と話している。

毎日新聞 2008年5月2日 18時48分(最終更新 5月2日 19時03分)

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