和歌山県内の公立13病院で医師が50人以上不足していることが県の調査で分かった。勤務医は過去5年間で約1割減少していて、地域に必要な診療体制を堅持するためにも医師確保が迫られている。 13病院の医師数は309人(2007年7月現在)。いずれの病院も医療法の定数は満たしているが、県医務課が今年4月に「差し迫って必要と考える医師数」を尋ねたところ、不足数は合計で53人に上った。 県は本年度から県立医大の定員を25人増員。医師不足解消への道筋はついたが、効果が表れるのは8年後で、この間の短期的な対策が求められている。 その一つに、地域医療に意欲のある医師を全国から募集し、公立病院などに派遣する「わかやまドクターバンク制度」がある。しかし、05年度の開始以来、約20人から問い合わせがあったが、採用に結びついたのは1人。診療科や希望地域でミスマッチがあるという。また、労働環境が厳しい公立病院でなく、診療所を希望する例もある。 全国で増加している女性医師の確保にも取り組んでいる。06年10月に開設した、医師募集情報サイト「青洲医師ネット」では女性医師の求職情報や育児環境情報などを提供。アクセス数は約1万4000件あるが、県内の女性医師割合は15・9%で全国平均17・2%をやや下回っている(06年厚生労働省調査)。 効果を挙げつつある施策もある。臨床研修医確保のため、県立医大と指定病院で構成する県医師臨床研修連絡協議会は、合同説明会や指導医講習会を開催。県内の臨床研修医採用数は07年が64人、08年が74人と県立医大卒業生数を上回っている。 将来、県内の公立病院などでの勤務を目指す大学生、大学院生、研修医を対象にした「医師確保修学資金」制度では、昨年度13人が貸与を受けた。うち7人は即戦力となる研修医だった。 また、勤務医不足が顕在化している新宮保健医療圏では開業医と勤務医が連携する救急医療体制を構築した。 県医務課は「直接的な情報発信には限界がある。県民にさまざまな制度を知ってもらい、知り合いの医師などに伝えてもらえれば」と話している。