●かんべえの不規則発言



2008年5月 






<5月1日>(木)

○白川総裁になってから、初めての日銀「展望リポート」が発表されました。景気への見通しについては「楽観的」との評もあるでしょうが、かんべえ的にはまったく異存なし。国際金融市場への認識も、とりあえずはこんなところだと思います。逆に気になったのは、経済・物価情勢の上振れ、下振れ要因について述べたくだりです。展望リポートは、@海外経済や国際金融資本市場の動向、Aエネルギー・原材料価格の動向、B企業の成長期待の動向をあげた後で、4点目として下記を指摘している。


第4に、緩和的な金融環境が続くもとで、金融・経済活動の振幅が大きくなる可能性があることである。現在、経済の減速によって、企業や家計、金融機関の行き過ぎた行動が生じる可能性は以前より低くなっているとみられる。もっとも、緩和的な金融環境が長く続き、今後も維持されると予想されるもとで、経済主体の期待の変化によって、その行動に行き過ぎが生じ、それが長い目でみた資源配分の歪みにつながるおそれは引き続き存在する。


○つまり、物価が明らかに上昇し始めた中において、金利が今の水準にとどまるということは、実質金利が低下することを意味する。それはどういう意味を持つかと聞かれれば、「そんな経験はないから、分っかりませ〜ん」と答えざるを得ない。教科書的に言えば、上記の通り「資源配分の歪みにつながる」(=「バブル再燃の怖れあり」)と言い切ることも可能でしょう。でも、「だったらお前、借金して株か土地を買ってみるか?」と聞かれれば、小心者のかんべえは咄嗟に「滅相もない!」と答えます。そんな度胸のある人は、あんまり居ないと思うのですよね。特に地価は、これから下がる公算が大だと思います。

○で、結局、分からないままなのですが、実質金利の低下はある程度、企業活動を支援するでしょうし、対ドルで円安をもたらす効果もありそうです。この際、「悪い物価上昇」でも何でもいいから、日本経済が「デフレは終わった」「金利は上がらない」という状態になれば、やはり投資環境として優れていると思うのです。特に外国人投資家の視点からすれば。

○その一方で、『デフレは終わらない』(上野泰也/東洋経済新報社)という議論もあるわけですよね。日本のデフレは、少子・高齢化という需要面の減少によるところが大きい。海外発のコストプッシュ型の物価上昇が起きたところで、それ自体が一巡してしまうともう右肩上がりにはならない。長期金利も2%を超えられないだろう、という理屈です。とはいえ、海外から来た物価上昇が、これまで値上げを躊躇してきた経営者の心理的な障壁を取り払い、製品価格と賃金が緩やかな上昇を始める、というシナリオにも可能性がある。甘いですかね。

○ところで最近、この経済ブログに教わることが多いです。この方、官庁エコノミストのようですが、「阪神ファン」だとか「子供がポケモン好き」とか、ずいぶん当方と共通項が多いようですね。そういえば今宵のタイガースは今期初めて同一カードで負け越しました。無念。



















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編集者敬白





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by Kanbei (Tatsuhiko Yoshizaki)