九州7県で小児科を持つ病院や診療所の数が、2007年4月から08年4月までの1年間で計58カ所減ったことが、西日本新聞のまとめで分かった。7県すべてで減少し、福岡、長崎、鹿児島では10カ所以上減っている。小児科の医師不足や、少子化で採算が取れなくなってきたことが背景にある。一方で、内科を持つ医療機関は7県で計35カ所増えており、先細りする小児医療の実態があらためて浮き彫りになった。
西日本新聞が九州各県の社会保険事務局に問い合わせたところ、07年4月1日時点で小児科を持つ医療機関は計2841カ所あったが、08年4月1日現在では計2783カ所に減少していた。
病院(20床以上)と診療所(19床以下)の区分では、病院が6カ所、診療所が52カ所減った。県別の減少数は、長崎、鹿児島=11カ所▽福岡=10カ所▽熊本=9カ所‐などだった。
小児医療をめぐっては、病院勤務医を中心に労働実態の過酷さが指摘されている。緊急性の高い患者が対象の時間外診療に、仕事を持つ親の事情で昼間に受診できなかった子どもが多数来院。子どもの病気は軽症と重症の判断が難しく悪化すると進行が早いため、深夜に呼び出されることも多いなど拘束時間は長いが給与は高くない。
このため、新人医師が研修先を自由に選べる「新臨床研修制度」が04年に導入されて以降、小児科を志望する研修医が急減。地域の病院に医師を送っていた大学病院の小児科医局は人手不足に陥った。小児科医の集約化を図るため、大学病院が派遣医師を引き揚げる動きが九州でも目立っている。
小児科医の確保が難しいことに加え、経営判断からも小児科を廃止・縮小する医療機関もある。福岡県のある病院の小児科部長は「小児科は診療報酬が低く、手間がかかる割に検査や薬の量が少ない。以前から不採算部門の代表格だったが、少子化が拍車をかけている」と語る。
日本小児科学会理事も務めた原寿郎・九州大大学院教授(小児科学)は「九州の小児科が1年で58カ所も減ったとは驚きだ。小児科の診療報酬は手厚くなりつつあるが、実態に見合わない。このままでは小児科以外の医師が子どもを診療せざるを得ない状況に陥りかねない」と話している。
=2008/05/02付 西日本新聞朝刊=