七十五歳以上を対象にした後期高齢者(長寿)医療制度について福田康夫首相が見直しを指示した。それだけ高齢者の不満は強い。特に保険料算定が低所得層ほど不利な構造の是正を急ぎたい。
三月末までに届くはずの「被保険者証」が届かなかったり、届いても何か分からず誤って捨てられたり、保険料を間違って徴収されたなどのケースが続発した。
こうした事務的ミスとは別に制度の最大の欠陥として浮かび上がったのは、厚生労働省が当初「半数以上は国民健康保険(国保)の保険料よりも下がる」と説明していたにもかかわらず、逆に上がった高齢者が多いことだ。特に低所得層で目立った。
保険料率を都道府県単位で統一した結果、財政的に余裕のある一部の市町村が低所得の国保加入者に独自に行ってきた保険料の減免措置がなくなったためだ。
低所得層への配慮が与党、厚労省には欠けていたといえよう。
増大する高齢者医療費をどう安定的に賄うかは、十年以上にわたって国会などで議論されてきた。
その結果、健康保険組合などから財政規律が働かないとの批判があった「拠出金制度」を廃止し、高齢者と現役世代との負担と給付のルールを定め、全体として医療費増大の抑制を図った。財政単位を市町村から都道府県に拡大・再編成し、市町村間の保険料の格差是正と安定化を図った。
だが、こうした制度の大枠を決めることに論議は集中し、新制度を運用する際、個々の高齢者の保険料がどうなるかという最も身近な問題への認識が政治家、厚労省官僚双方に欠けていた。
首相は二回目の保険料の年金からの天引きが行われる六月までに「どのような問題が生じているかを集中的に点検し、きめ細かな手当てをする」と表明している。
そのためにまずすべきは、どれくらいの高齢者の保険料が上がったのかという実態調査だ。それに基づいて軽減措置などを含めた改善策を検討すべきである。
低所得のため子供の健康保険の被扶養者で今回、保険料徴収の対象になった高齢者への減免措置の延長論が与党内で上がっている。
ところが、同じ低所得でも独居高齢者は以前から国保の保険料を払っており、今回も四月から保険料を年金から天引きされている。減免措置はこうした不公平も解消するものでなければならない。
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