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【主張】硫化水素自殺 二次被害より一層深刻だ
硫化水素による自殺が後を絶たない。全国各地で自殺者が出ており、放置できない状況にある。硫化水素自殺は本人だけでなく、周囲の人を二次被害に巻き込む危険性が高いだけに深刻だ。
硫化水素自殺は、1年前ごろから目立ち始め、今年になって急増している。特に先月は50件を超えた。
1日も各地で自殺が相次いだ。北海道小樽市では、24歳の男が自宅2階の部屋で硫化水素自殺で死亡、物音に気づいた母親が様子を見に行き被害にあった。付近住民約350人が一時、小学校のグラウンドに避難した。
東京都江戸川区では夫婦間のトラブルから、会社員の妻(33)が硫化水素で自殺を図り重症となった。長男や駆けつけた警察官ら3人が気分が悪くなり病院に搬送された。
このように、硫化水素による自殺が極めて深刻で無視できないのは、第三者を巻き添えにすることだ。一歩間違えれば多くの人が犠牲になることを、強く認識する必要がある。
硫化水素ガスは殺傷能力が高く、そのうえ簡単な方法でガスを発生させられるため、これを利用した悪質な犯罪も起きている。1日には福島県桑折町で硫化水素で母親を殺そうとした男が殺人未遂で逮捕された。
自殺は連鎖反応的に起きるケースが多い。インターネットで自殺を呼びかけ、見知らぬ者同士が集団で練炭を使った自殺が、つい最近まで続発した。
硫化水素自殺も、きっかけはインターネットだ。発生方法を具体的に説明した内容がネットに書き込まれ、若者を中心に自殺志願者の間に広がった。
二次被害が憂慮されるだけに、警察庁も対策に乗り出したのは当然である。周囲を巻き添えにするような書き込みを「有害情報」に指定、ネット接続業者(プロバイダー)などに書き込みの削除を要請した。
警察当局には、自殺を誘発するような具体的な書き込みや文言は厳しく取り締まってほしい。
日本では毎年、約3万人が貴い命を自ら絶っている。特にネットの普及で自殺者の数が増えているのが実情である。
ネット社会に対応しながら、どうすれば有効な自殺防止につながるか、一人ひとりが真剣に考える時代にきている。