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NIKKEI NET

社説1 難所にさしかかった米国の金融政策(5/2)

 米国の金融政策運営が難所を迎えている。昨年9月からフェデラルファンド(FF)金利の引き下げを続けてきたものの、住宅バブル崩壊で痛んだ景気が息を吹き返す見通しは立っていない。一方、資源価格が上昇する中でさらに金融を緩和すれば、物価が先行き高くなってくるとの観測を強めかねない。

 米連邦公開市場委員会(FOMC)は4月30日、FF金利の誘導目標を0.25%引き下げ、2.0%とした。だが、2人の委員が利下げに反対しており、合意形成が難しくなってきたことをうかがわせる。

 1―3月期の実質GDP(国内総生産)成長率は年率0.6%と2期連続で1%を割った。在庫増加分を除けばマイナス成長である。4―6月期もマイナス成長か、極めて低い成長にとどまりそうだ。

 住宅バブルの調整にはかなり長い時間がかかり、信用力の低い個人向け住宅融資(サブプライムローン)問題に端を発した金融不安もくすぶり続けている。このため、一連の金融緩和策がすぐに景気を刺激するわけではない。

 一方、財政による景気対策では、円換算で11兆円規模の税の還付が今週始まったが、消費をどの程度持続的に押し上げるかは不透明だ。

 景気の冷え込みが続いている間に物価上昇への懸念が強まってきた。その背景には、原油や食料品など商品市況の急上昇がある。

 FF金利から物価上昇率を差し引いた実質金利はすでにマイナスだ。インフレ圧力が強まる中で利下げを続ければ、ドル売りを加速し、原油など商品先物への投資資金のシフトに拍車をかける恐れもある。景気停滞が物価を抑える要因になることを考慮しても、安易に利下げしにくい環境になってきたのは確かだ。

 米国の景気対策として、利下げ頼みに限界が見えてきた。金融不安がくすぶり続け、信用市場の収縮が続く限り、金融緩和の効果はなかなか表れにくい。金融機関が損失処理や資本増強を加速させ、金融市場の不安感をぬぐうことが信用市場の正常化には不可欠になる。

 不安感の根元には住宅価格下落や住宅ローンの焦げ付き増加がある。政府機関が住宅ローンや住宅ローン担保証券(RMBS)をまとめて買い取ることも検討すべき課題だ。

 資源高に伴う物価上昇と景気減速にどう対応するかは、日本にも共通する問題だ。原材料や食料品の値上がりが企業収益や消費にどの程度の悪影響を及ぼすのか、注意深く見守っていく必要がある。

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