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社説2 訪日する胡主席に伝えたい(5/2)

 中国の胡錦濤国家主席が6日から日本を公式訪問し、福田康夫首相と会談する。日本が議長国である7月の主要国首脳会議(洞爺湖サミット)や、8月の北京五輪を控え、両首脳が二国間の課題だけでなく、チベットへの対応など国際社会が懸念する問題でどのようなメッセージを発するのか、世界が注視している。

 訪日は胡主席が昨年10月に共産党総書記に再任された後、初の外国訪問となる。中国首脳が一国だけを訪れるのは極めて異例だ。胡主席は訪日を「花を咲かす旅」と位置付けている。だが、懸案である中国製冷凍ギョーザ中毒事件の真相究明は進まず、東シナ海のガス田問題でも大きな進展は見込めそうにない。

 一方チベット問題での中国政府のかたくなな姿勢や、聖火リレーを巡って目立つ中国人による愛国主義的な動きの突出は、中国は異質という印象を世界に広げた。世界経済で大きな地位を占めるようになった中国が問われているのは、国際社会の一員としての行動のあり方だろう。

 チベット問題で中国政府はようやくダライ・ラマ14世側との対話再開の意向を示したが、国際世論の逆風をかわす単なるポーズでは意味がない。スーダンのダルフール地方の人道危機では、資源確保の狙いから中央政府側に肩入れする中国の対応に首をかしげざるを得ない。

 日本と欧州連合(EU)は先に開いた首脳会議でミャンマー民主化支援での日欧協力を明示した。ミャンマー軍事独裁政権を支えてきた中国へのけん制にほかならない。人権にかかわるさまざまな問題で日本の考えを率直に中国に伝える時が来た。

 支持率低迷に悩む福田首相は首脳会談で戦略的互恵関係の強化や環境問題での日中協力を演出するだろう。それだけでは外交の得点にならない。首相には主要国を代表して発言する責務があり、3月のチベット騒乱の真相解明のための国際調査団受け入れや内外メディアの自由な取材を主席にじかに求めるべきだ。

 胡主席は7月のサミットの際にも訪日する予定だ。中国が国際社会と協調し五輪を成功に導くためには、人権状況の改善に取り組む明確な意思を示さなければならない。2度の訪日はその絶好の機会でもある。

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