国土交通省近畿地方整備局の諮問機関である「淀川水系流域委員会」が、淀川水系で治水目的のダムは不適切との意見書をまとめた。具体的には、同整備局が昨年8月、提示したダム建設を前提とした原案の見直し、再提示を求めている。
これに対して、同整備局は洪水防止の上で、4ダムの整備は堤防の補強や川底の部分的な掘削より効果が大きく、コスト面でも安いとの見解だ。13日の次回流域委会合であらためて表明する。
河川整備計画の策定に際して河川に関して学識経験を有する人からの意見聴取や、住民の意見を反映させる仕組みは97年の河川法改正で盛り込まれた。同流域委はこれを受けて、01年に設置された。
土木や災害、環境などの学識経験者のみならず、地域住民もメンバーになった。委員選定では公募方式も取り入れた。会議はすべて公開で、役所主導の運営を避けてきた。議論の基本的方向は、ダムに頼る治水からの脱却にあった。
公共事業といえば、役所が計画し、それを執行するという手法に一石を投じてきたことは間違いない。ただ、河川整備計画作りでも淀川水系を除けば、流域委の意見は聞き置くところで止まっている。これは河川法改正の趣旨にも反する。
国土交通省は今回の意見書を真摯(しんし)に受け止め、合意点を見いだす努力を行い、淀川水系の整備計画に反映させるべきだ。
こうした住民などの参画は道路整備などほかの公共事業にも取り入れるべきである。道路整備ではパブリック・インボルブメントという形の住民からの意見聴取も採用されているが、高速道路は国会議員も入っている国土開発幹線自動車道路建設会議で決定されている。一般道路も国交省段階で決定されるのが実態だ。
道路整備は道路特定財源の一般財源化とも絡んで、抜本的な見直しが必要な時だ。基本的には全国ネットワーク以外の道路計画は地方への権限移譲が望ましい。同時に、河川整備と同様に、中期計画などの全体計画、個別道路計画を問わず、住民参画の手法を取り入れるべきだ。そこで、本当に必要な道路を精査し、最も効率的に整備する道を探ればいい。
道路関係議員や国交省道路局は、「道路整備は地域の要望」と言い続けている。しかし、要望の強い歩行者優先の道路や自転車道路の整備は進まない。その一方で、二重投資、三重投資といわざるを得ない道路も見受けられる。
道路特定財源の一般財源化は道路整備計画の全面的な見直しと一体でなければ、看板の掛け替えに終わってしまう。そうしないためにも、有権者による監視機能も持ちうる計画策定への住民の参画は高い効果が期待できる。
公共投資は住民のためのものである。
毎日新聞 2008年5月2日 東京朝刊