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裁判員の責任果たしたい 視聴覚障害者「配慮を」 点字・手話、遅れる体制

 来年5月のスタートまで1年余りに迫った裁判員制度で、視覚、聴覚障害者に対するサポート体制の整備が遅れ、審理参加に欠かせない点字翻訳や手話通訳などの実施方法も決まらない状態になっている。最高裁は「施行に間に合うよう、検討している」としているが、どんな支援が必要なのか、いまだに障害者団体への聞き取り調査も行われていない。「私たちに務められるのか」。障害者の間には懸念が広がっている。

 裁判員法は「職務遂行に著しい支障がある人」は裁判員になれないと規定しており、障害の種類や程度によっては裁判員になれない場合がある。その判断は裁判所が行うが、視聴覚障害者は原則、裁判員の対象になる。

 日本盲人会連合(東京)は昨年5月、供述調書などの点字翻訳や裁判所への移動に付き添うガイドヘルパーの費用補助などを最高裁に要請した。新制度では、裁判員の理解を助けるため法廷内のモニターに図面などを示すビジュアル化も進むため、鈴木孝幸情報部長は「国民の義務なので私たちも責任を果たしたい。参加しやすい環境をつくってほしい」と訴える。

 聴覚障害者も不安は多い。全日本ろうあ連盟(東京)の西滝憲彦理事は「私たちが参加するためには、発言を手話で正確に訳せる通訳者がどれだけ確保できるかが大切」と指摘するが、通訳者の選任方法は決まっていない。国の資格を持つ「手話通訳士」(約2000人)は、佐賀県で登録者が1人、鳥取、島根両県で各8人しかいないなど、地域格差が大きく、難解な法律用語を手話でどう表現するかなどの課題もある。

 こうした声に対し、最高裁は「障害に応じて、できるだけの配慮はしたい」と述べるにとどまっている。

 裁判員の対象は原則20歳以上の日本国籍を持つ人。一方、厚生労働省によると、2006年度で18歳以上の視覚障害者は約39万人、聴覚障害者は約43万人。裁判員制度同様、国民が司法に参加する「検察審査会制度」では、視聴覚障害者が審査員になれないと規定した条項が廃止された00年4月以降、全国で視覚障害者2人、聴覚障害者9人が点字翻訳や手話通訳の支援を受けて審査員を務めている。

 全盲の弁護士で、日本盲人会連合副会長の竹下義樹さんは、「最高裁はまず障害者の要望を聞くべきだ。健常者との情報格差がないよう、支援を充実させてほしい」と訴えている。

2008年04月28日  読売新聞)
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