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2008年5月2日

◎アジア選手権閉幕 国際大会誘致プランがいる

 金沢市のいしかわ総合スポーツセンターで開催された二〇〇八年アジアウエイトリフテ ィング選手権は、北京五輪の出場権をかけた最後の戦いにふさわしく、世界新記録や日本新記録が相次ぎ、国際大会ならではの緊迫感や迫力を存分に感じさせた。

 世界レベルのアスリートたちの戦いを目の当たりにした県民、市民はウエイトリフティ ングの魅力に触れ、日本人選手や地元選手の応援を通して一体感を味わったに違いない。通訳や会場案内などを務めたボランティアの活躍も大会関係者から高い評価を受けた。死力を尽くした各国の選手にとっても金沢は忘れがたい思い出の地になるだろう。このように国際大会が開催地にもたらす波及効果は計り知れないものがある。

 県や金沢市は北陸新幹線開業へ向け、学会や国際会議などのコンベンション誘致策を強 化しているが、スポーツの国際大会開催にもぜひ力を入れてほしい。そのためには国、競技団体への働きかけや情報収集を含め、綿密な誘致プランがいるだろう。

 サッカーJリーグやプロ野球チームの本拠地となっている都市では「みるスポーツ」に 力を入れている。たとえば新潟県は県民スポーツ振興プランの中で、国際大会など大規模スポーツイベントの誘致を大きな柱に位置づけ、福岡、仙台市でも県と協力して国際大会の開催を目指している。スポーツイベントが地域に与える影響を実感しているからであろう。石川県でもBCリーグの石川ミリオンスターズやサッカーのツエーゲン金沢など地域密着型チームが誕生し、スポーツ観戦は身近なものになってきたとはいえ、国際大会の実績には乏しい。

 いしかわ総合スポーツセンターは競技力向上や生涯スポーツの普及など、さまざまな施 策を担っているが、スポーツジムの延長線上のような取り組みだけでは物足りない。県が石川のスポーツ振興の拠点に位置づけるなら、県民にスポーツの感動や夢を与える場であってほしい。せっかくの施設を宝の持ち腐れにしないためにも、ワクワクするような大会を誘致してもらいたい。

◎地方法人特別税 軽減課税も本気で検討を

 衆院で再可決された税制改正関連法には、大都市と地方の自治体の税収格差を是正する ため「地方法人特別税」を新たに設ける暫定措置法や、「ふるさと納税」制度を創設する改正地方税法が含まれている。揮発油税の暫定税率復活の陰に隠れて目立たなかったが、福田内閣の看板である地方再生策の目玉の一つであり、自治体の税収格差是正に役立つことが期待される。

 ただ、地方法人特別税は税制の抜本改革が行われるまでの暫定措置であり、法人関係の 税収が少ない自治体にはありがたい措置ながら、実際にどこまで地方再生につながるかは未知数である。

 税収格差とはすなわち地域経済力の格差であり、国からの税の分配を増やすだけでは、 本当の地域活性化は期しがたい。税源そのものを地域に増やしてこそ目指す地方再生であり、その道を開く効果的な税制改革案として、私たちは法人税、所得税の税率を過疎地域で軽減し、それによって企業や人を地方に誘導する方法を提言してきた。今後の税制の抜本改革論議の中で、この「軽減課税」の導入も本気で検討してほしい。

 地方法人特別税は、地方税である法人事業税の約半分(二兆六千億円)を国税の法人特 別税に切り替え、人口、従業員数に応じて地方に再配分するものである。法人事業税の税収は大企業の本社が集中する東京都などと、企業の数や規模で及ばない地方の自治体との格差が著しいため、それを是正する方法として考え出された。

 国主導による手っ取り早い格差是正策であり、法人事業税が最も多い東京都の場合は約 三千億円削られ、財政力の弱い自治体に回されることになる。これによって大部分の道府県は増収となる。

 しかし、地域格差解消の抜本策とはいえず、法人事業税の半分を国税にすることは、分 権改革にそぐわないとも言える。地方の税収を増やす方法として、地方消費税の引き上げ案も出ているが、これも対症療法に過ぎない。税体系を根本的に見直して、地方の経済社会そのものを元気にする方法を真剣に考えてもらいたい。


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