◆厚生年金の受給額の計算方法は。
「厚生年金の計算? 私にもできません」。社会保険庁職員に計算方法を聞いたところ、こんな答えが返ってきた。
会社員の厚生年金は、定額の基礎年金部分(1階)と報酬比例部分(2階)からなる。 国民年金は収入の多寡にかかわらず、40年加入で満額約79万円で、計算も単純。厚生年金も1階は国民年金とほぼ同じだが、2階部分が収入や勤務時期などで変わり、分かりにくい。
見込み額を表にした。勤続30年で平均標準報酬月額(平均月給にほぼ相当)が30万円の場合、2階部分は約82万円。1階は約59万円なので、年約141万円を受給できることが分かる。
2階部分は1946年4月2日以降生まれの場合、「過去の給与の平均(平均標準報酬月額)×7・5÷1000×加入月数×1・031×0・985」--で計算する。7・5は支給率、1・031と0・985は物価変動を加味する値。ボーナスにも給与と同じ保険料率が導入された03年度以降分は、別の計算式も必要になり、複雑だ。
さらに物価変動を受け、標準報酬を現在の賃金水準に置き換える乗数も生年月日や勤務時期により約500通りもある。
手計算は至難。社保庁職員もパソコンを使う。だが「厚生年金のように、義務(保険料)と権利(年金受給)の関係が分かりにくいのが年金不信の最大の原因」との指摘もある。
計算式ではまた、46年4月2日以後に生まれた人で7・5の支給率が、たとえば27年4月1日以前では10・0と、約1・3倍の差がある。世代間格差という問題も浮かび上がる。
受給額の目安は社会保険庁の「自分で出来る年金額簡易試算」(http://www.sia.go.jp/sodan/nenkin/simulate/top.htm)で分かる。一度試算してみてはどうだろう。【中西拓司】
毎日新聞 2008年5月1日 東京朝刊