前作、そして今作で、より濃く自身の内面を表現している安藤裕子。少しずつ縮まる彼女との距離感を楽しみつつ、今後の可能性を大いに感じてほしい。

デビュー・ミニ･アルバムのリリースから約半年を経て、安藤裕子が1月に、2ndミニ・アルバム「and do, record.」を発表した。取材場所に現れた彼女の第一印象は、はかなげでどこか不思議な雰囲気を持つ女性……そんな印象だった。しかし、いざ取材を開始すると、凛とした表情で今作に込めた想いを語ったり、かなり詳しいという健康に関する話では、お茶目な表情を見せたり。くるくる変化する表情は、まるで子猫のようにチャーミング。その様子は、今作にも共通している。ささやくような歌声や、訴えかけるような歌声など、さまざまな表情を見せているだけでなく、CDジャケットやPV制作にも自ら携わり、より深く内面を表現していた。

−1月に発表されたミニ・アルバムは、前作をさらに発展させたものになりましたね。

安藤裕子（以下安）：「そうなんです。私は人見知りをするので、まず初対面は、「どうも安藤です、よろしくお願いします」っていう、ちょっとかしこまった感じがあって、前作でも、そういうところがあったんですね。でも、やっぱり、もっとコミュニケーションを深めていきたいっていうのがあって。だから、もうちょっとくだけた感じで、自分の色を出していきたかったんですよ。今こうしてきちんと話してる口調ではなく、「そんでさぁ」みたいな（笑）。話し方が、もうちょっと自分らしくなった段階にあるというか。

−距離をより縮められたから、これまで以上にさまざまな表情がある楽曲が並んでいる、と。

安：ええ、私にとって楽しかったり、まじめなことだったり、音楽的に、「これよくない？」ってリコメンドするものであったり、いろんな曲を入れました。やったことのない世界観にチャレンジして、自分のいろんな面を一枚の中に入れたいなと、ずっと思っていたんですよ。

−また、ご自身でジャケットやPVの制作にも積極的に取り組まれたと聞きましたが。

安：「だれだ？」っていうくらい、私がどんな人間であるか、まだ皆に知られていないと思うんですね。だから例えば今回、CDジャケットは絵を描いたり、自分でアイデアを出した写真もあって。カメラマンさんに、こういう写真を撮りたいですってお願いしたんです。「いっしょにデートしてくれませんか？」って言って、ドライブしながら撮ってもらったり。1曲ずつページを設けているので、私はその曲をこういうふうに思ってるよっていう世界観を、視覚的にも表せるようにしたかったんですよ。

−なるほど。ちなみに今回、写真や映像からインスパイアされてできた曲も多いとか？

安：曲って、考えながら作るより、ハッと思いつくほうが、いい曲ができるんですよ。今回でいうと、「life」っていう曲もそうで。アフガニスタンでの戦争が終わったころだと思うんですけど、現地の子どもたちを撮ってる写真を見たんです。輝くような笑顔を見て、すごく自分のことを恥ずかしく思って。私たちは、「悩みたがり」だったりしますよね？
でも、悩むだけじゃなくて、家族や友だちとか、大事な人といっしょにいるだけでも幸せなことなんだ、と。それで、この曲ができたんです。英語詞なんですけど、“この世界は今まで雨ばかりだと思ってたけど、君に出会ったとたんに雨が止んだ。君がいるから、生きてるのがこんなに素敵だと思えるようになったんだ”っていう内容なんですよ。こういうことは恥ずかしくて、日本語じゃ書けないっていうのもあったし（笑）、曲もシンプルだから英語詞になりました。

−写真を見ただけで、そこまで作品に反映できるとは……。

安：う〜ん……、この5年くらい、曲を作って歌詞を書いてるから、自然とそうなるのかなぁ。初めは全然うまくできずに、ダサイ曲になっちゃったり（笑）。でも、だんだん思ったことを話すより、歌で表現するほうが、すんなりできるようになってきて。そういえば、この間も、NHKの「真剣10代しゃべり場」に出演してる子たちを観て、「あぁ、まじめに語ってるわっ」ってウルウルもらい泣きして（笑）。それで作った曲もあるんですよ。

−今、制作中というフル・アルバムにその曲が入ったりも？

安：その予定です。まだ今は制作中なんだけど、今作より、もっとふざけられる幅が広がったというか。でも、ちゃんとまじめなところもあるし。友だち同士でも、だんだん仲が深まっていくと、伝えておきたいこともありますよね？ 仲がいいから、もっとわかってほしいっていうか。そういう面をもっと出していこうと思っています。

文・インタビュー●栗山 美果