二次救急医療機関への財政支援を

 厚生労働省の「救急医療の今後のあり方に関する検討会」が4月30日に行ったヒアリングでは、医療法人の経営者や、すべての患者を救急室(ER)で初期診療するER型救急の担当医らが二次救急の現場の実態について報告した。

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 大阪市で加納総合病院を運営する特定・特別医療法人協和会の加納繁照理事長は、昨年4月から今年3月までの1年間に救急受け入れ要請があった9,229件のうち、6割を超える5,743件で対応できなかったことを明らかにした。受け入れられなかった理由としては、「処置中」が35%で最多。以下は、「適切な部屋がない」15%、「専門外」13%などの順だった。受け入れ不能は、医師や看護職員が少なくなる深夜帯(午後11時−午前8時)で特に多くなるという。

 また加納氏は、夜間救急に携わる医師や看護師、技師、事務職員らの人件費だけで年間1億6,000万円も掛かる一方で、救急搬送される患者の約1割で未収金が発生する現状も指摘。受け入れ不能の解消に向けた課題として、待遇改善を柱とする医師・看護師不足の解消や、未収金問題の解決を挙げた。

 加納氏は「二次救急医療に十分な点数が付かないことも現状としてある」との認識を表明。二次救急に積極参加する医療機関が算定できる「救急搬送加算」の新設など、財政面からの支援を求めた。

■ER救急の全国普及、今からでは困難
 福井大学医学部付属病院でER型の救急医として勤務する寺沢秀一氏は、ER型救急を今から全国展開することは困難との見方を示した。

 ER型救急では、担当医が全患者を初期診療した上で、入院や手術が必要な患者を各診療科に振り分ける。ER型救急の担当医は入院治療や手術を担当しない。

 寺沢氏によると、ER型の救急体制を取る場合には、▽受け入れ拒否が発生しない▽初期診療が標準化できる―などのメリットが見込める。しかし一方で、▽救命救急科や総合内科がないと、入院中の主治医が決まるまでに時間がかかるため、医療の質の維持が困難になる▽ER型救急医と各科の専門医の関係が悪化しかねない▽ERでの患者の待ち時間が長くなる―などのデメリットもあるという。

 寺沢氏は、ER型救急の普及を図るには、病院の経営陣や医療従事者だけでなく、患者の理解も不可欠との考えを表明。その上で、「ER型救急医の働き方を理解してもらえるまでには、ものすごく過酷な試練を経なければならない。ざっと20年はかかるが、今の救急医療の状況では20年後まで待てない」と述べ、これから全国規模でER型救急体制の普及を進めるのは困難との見方を示した。


更新:2008/05/01 17:28     キャリアブレイン

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08/01/25配信

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医師の山田規畝子さんは、脳卒中に伴う高次脳機能障害により外科医としての道を絶たれました。しかし医師として[自分にしかできない仕事]も見えてきたようです。