自主研究 | ||
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機関:総合研究開発機構 |
90年代はじめのバブル経済の崩壊は、 就職氷河期世代とも呼ばれる大量の若年非正規雇用者を発生させることとなった。こうした状況は終身雇用、 年功序列賃金に支えられてきた日本型雇用を揺るがせるとともに、社会保障制度から排除される大量の若年層を生んでいる。 若年非正規雇用の増加は、就職氷河期だけに限った一時的な問題にはとどまらず、 グローバル化による人件費削減圧力と技術革新による分業の中で生じつつある長期的かつ構造的な問題であるという視点からの接近も必要である。
本研究では、就職氷河期を若年非正規雇用増加の一事例としてとらえ、 若年非正規雇用の抱える問題点を考察した。今日の非正規雇用者の中には、家計の主たる所得稼得者も少なくない。また、一度、 非正規雇用となった若者が正規雇用に移行することがきわめてむずかしくなっている。非正規雇用は能力開発が難しく、雇用不安の問題とともに、 生涯、低所得のままとなる危険性も少なくない。本報告書では若年非正規雇用は、 今後の日本社会に大きな影響を与える問題であることを示すとともに、若年非正規雇用問題への有効な対応策として、 非正規雇用を組み込んだ新しい制度設計と大規模な就労支援を早期に行っていくことを提言する。
■ 研究報告書 「就職氷河期世代のきわどさー高まる雇用リスクにどう対応すべきか」
■ 研究体制:「若年雇用研究会」
(研究会委員)
阿部 正浩 獨協大学経済学部教授(座長)
荻野 勝彦 トヨタ自動車株式会社人事部担当部長
佐野 哲 法政大学経営学部教授
本田 由紀 東京大学大学院教育学研究科准教授
(NIRA)
井上 裕行 研究開発部長
辻 明子 研究開発部リサーチフェロー
畑佐 伸英 研究開発部リサーチフェロー
平井 照水 研究開発部リサーチフェロー
■ 研究会の開催状況
第1回研究会 2007年12月5日(水)
第2回研究会 2008年 1月21日(月)
ヒアリング 2008年 2月5日(火)
(講師)みずほ情報総研株式会社主席研究員 藤森克彦氏
第3回研究会 2008年2月25日(月)
第4回研究会 2008年3月13日(木)
■ 研究報告書目次
I.総論
新たな雇用制度設計を迫る非正規雇用の増加-
非正規雇用増加の背景と評価-
II.各論
非正規社員の構造変化とその政策対応 阿部正浩
人事管理からみた若年非正規雇用問題 荻野勝彦
非正規雇用を考える-
企業に視点を置いた雇用政策を- 佐野 哲
若年就労問題に対してより強力な取組みを 本田由紀
III.資料編
英国労働党政権における
「福祉から雇用へプログラム」
-若年失業者ニューディールを中心に(ヒアリング配布資料) 藤森克彦
スウェーデンの若年者失業問題 小川晃弘
就職氷河期世代の老後に関するシミュレーション 辻 明子
(2008年4月発行)
<研究報告書関連対談>
「非正規労働の現状と今後」
(対談シリーズ第31回)
ゲスト:阿部正浩獨協大学経済学部教授 聞き手:伊藤元重NIRA理事長