ここから本文エリア あおもり医のゆくえ
黒石病院(下)・院長自ら値引き交渉2008年04月26日 1月、08年度予算案の編成が大詰めを迎えていた。黒石病院の村田有志院長は、院長室に取引業者を次々と招き入れた。委託料の引き下げ交渉が目的だった。 「お宅とは長いつきあいをしたいが、病院は経営危機。なくなれば住民もお宅も大変でしょう。困った時はお互い様。この額で何年か我慢してもらえないだろうか」 渋る業者もいたが、大半は了承した。3億円を超える委託料などの経費を8500万円削減した。 事務方ではなく院長自らが業者と交渉するのは異例だが、「一歩も引けない状況だから」と村田院長。 地方財政健全化法が08年度決算から適用され、病院会計の不良債務は黒石市の連結実質赤字比率に加算される。 07年度見込みで15億円を超える不良債務をどこまで削減できるか、病院の取り組みが市全体の命運を左右する。 市職員の給与削減に準じて病院職員の給与もカット、退職者の穴埋めも見送った。コスト削減に一定の道筋がついたものの、同病院の経営アドバイザーを務める茨(いばら)常則さんは、「その先」を求める。 「病院職員は一丸となって経営改善に取り組む。病院はその良さを地域に積極的にアピールする。それが“攻めの経営”です」 今月9日。病院幹部が月1回集まる管理運営協議会に初めて病院労組約280人の代表2人が参加した。病院内の風通しを良くしようという改革の一環だ。 新年度の方針を協議した初回は、労組側からの発言はなかった。書記長は「協力は惜しまないが、労働条件が変わる提案があれば、組合員と協議が必要」と慎重姿勢。だが協議会参加の意義は認める。「組合員の間では『職場に居続けられないのでは』という疑心暗鬼やデマが広がっている。協議会を通して、トップと組合員が情報を共有できるのはプラスです」 病院から地域住民への呼びかけも始まった。 産婦人科は3月、ホームページを開設した。5月の連休明けから「手ぶらでお産」プロジェクトを始める。おむつやスリッパなど、妊婦の持ち物をできるだけ病院で負担し誕生祝いに鳴海広道市長の直筆メッセージもプレゼントする。 外科が中心となって始めたのが出前講座。2月16日、黒石市老人福祉センターで第1回の「健康講演会」が開かれた。演題は乳がん。20人ほどの参加者のほとんどが、女性だった。 講師の平尾良範外科部長はテレビ番組のドキュメンタリー「余命1カ月の花嫁」から語り起こし、乳がんの早期発見の大切さを強調した。触診だけではわからないがんを発見できる「マンモグラフィー検診」を紹介した。 「40代以上の方は2年に1回は受けてほしいですね。うちでもやっています」。病院の検査機器の写真を示し、PRも忘れなかった。 講演は好評で、3月には同じ乳がんのテーマで平川市内でも開催した。今月26日には外科で力を入れている内視鏡下手術を紹介する。 八木橋信夫副院長(外科)は「これまで病院は患者を待つ姿勢だった。これからは患者と病院とのきずなと信頼を、こちらが働きかけて築いていかなければならない」と力を込める。 08年度予算の医業収益は患者増を見込んで前年度より5・2%増の49億円。職員意識も含めた改革は、ほどなく結果を求められる。平川市尾上地区から毎月訪れるという男性患者(76)は「雰囲気が少し明るくなったかな」と思うという。「平川病院が診療所になってしまったので、頼りは黒石病院。何とか立ち直ってほしい」と語った。 マイタウン青森
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