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あおもり医のゆくえ

黒石病院(上)・外部の指導で経営改革

2008年04月25日

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黒石病院の経営を話し合うアドバイザーの茨常則さん(左)と村田有志院長(中央)=黒石市北美町

 「“宿題”は進んでいますか」。黒石市国保黒石病院の村田有志院長の部屋に、東京の病院経営アドバイザー茨(いばら)常則さんから、ひんぱんに確認の電話が入る。

 村田院長が、茨さんをアドバイザーとして招いたのは昨年11月。「病院経営には医師は素人。私が危機を訴える手紙を出して、立て直しをお願いしました」

 以来、茨さんは毎月1回病院を訪問している。そのたび何項目もの「宿題」を出し進度をチェックしてきた。

 〈妊婦検診のトイレの前に一般外来から見えないようついたてが必要〉

 〈体が不自由な患者が来院する時は、職員が車いすを持って出迎えを〉など、細かい指摘内容も多い。

 茨さんは民間病院の職員を経て83年にコンサルタント会社を設立。青森県や下北医療センターの病院経営アドバイザーを務めたこともある。いわば病院の「病気」を診る専門家だ。

 昨年11月、黒石病院を初めて訪れた茨さんが最初にしたことは病院内の見回りと医師や看護師、事務職などの幹部からの聞き取りだった。

 「病巣は見えてきた。相当深刻です。手遅れかもしれない」と診断する。

 ■「仕送り」不足

 黒石病院の経営状況は急速に悪化している=表参照。資金不足を示す不良債務は06年度が12億3千万円。銀行からの一時借入金が雪だるまのように膨らんだ。

 07年度の不良債務は15億円を上回る見込み。病床利用率は70%を切っており、この状態が続くと国の指針で病床削減を求められかねない。

 最大の原因は医師不足といえる。看板科目だった脳神経外科の常勤医は03年度まで3人だった。だが、04年度の途中に指導的立場の医師が1人退職、05年度途中には残る2人も退職し、常勤医がゼロとなった。

 これに伴い入院患者が年間1万人以上減り、05年度決算では5億円の減収。07年度から常勤医1人を確保したが、複数でなければ大幅な収益回復は見込めない。

 加えて、市の一般会計からの「仕送り」にあたる繰入金が大幅に不足していた。病院の企業債償還分を除く一般会計繰入金は02、03年度がゼロで、その後は3千万円台。08年度に7800万円に増額したが、国が定める、一般会計から繰り入れすべき基準額には2億円以上も不足しているのが現状だ。

 鳴海広道市長は「一般会計本体が赤字なので、病院には出したくても出せない」と話す。一般会計、病院の不良債務を含めた同市の連結実質赤字比率は、07年度は32・8%となる見込みで、地方財政健全化法の「再生団体」となる基準の30%を上回る。

 ■厳しい風当たり

 病院などの赤字の穴埋めのため市所有の純金・純銀こけしも2億円で売却された。昨年10月、売却を承認した市議会全員協議会では「黒石病院を人口4万の市で持つのは無理」と、歯止めのかからない不良債務の増加に、いらだつ声も出た。

 村田院長も厳しい風当たりは知っている。「だからこそ生き残りをかけた改革でピンチをチャンスに変えたい」

 アドバイザーの茨さんはひと通り内情を把握すると、病院の体質そのものの改善を村田院長に求めた。「医師、看護師、技師、事務などの連携がバラバラ。一丸となって医師をもり立てる態勢になっていない」。強調したのは「攻めの経営」と、コストカットだった。(次回につづく)
(米沢信義)

 ■黒石病院の財務カルテ
年度       2001  02   03   04   05    06
病床利用率(%) 93.7 90.3 90.3 86.5 76.8  67.5
一般会計繰入金  0.05    0    0 0.31 0.30  0.30
   (億円)
不良債務額(億円)   0 1.35 2.71 3.61 6.51 12.31
不良債務比率(%)   0  2.7  5.3  7.1 14.2  29.2
常勤医師数      23   26   24   25   20    19
(不良債務比率−不良債務額が医業収益に占める割合。10%を超えると起債が国や県の許可制になるなどの制限を受ける)

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