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米ユダヤ系有力者、北京五輪のボイコットを呼びかけ
【ワシントン=山本秀也】全米ユダヤ人会議(AJC)のリチャード・ゴードン会長ら在米のユダヤ系有力者185人は4月30日、北京五輪のボイコットを世界のユダヤ人に呼びかける宣言を発表した。中国政府のチベット弾圧や、イラン、シリアなどとの緊密な関係を理由に「ユダヤ人はこうした政権のごまかしに手を貸すべきではない」と訴えており、中国には痛手となる。
「中国の五輪は戒律にそぐわない」と題した宣言は、「ホロコースト(ユダヤ人虐殺)記念日」にあたる同日を選び公表された。ユダヤ系組織「デービッド・ワイマン・ホロコースト研究所」(ワシントン)が取りまとめにあたった。
宣言は、ナチス体制下のドイツで開かれたベルリン五輪(1936年)が、「ユダヤ人への迫害から世界の目をそらす役割を果たした」と指摘。その上で、これと同様に、中国が五輪を利用して「内外での人権抑圧への注意をそらそうとしている」と非難した。
具体的には、中国政府に関して、(1)ダルフール地方での住民虐殺問題を抱えるスーダン政府を支援(2)チベットでの抑圧(3)自国民の権利侵害(4)イラン、シリアへのミサイル供給(5)パレスチナのイスラム原理主義組織「ハマス」との友好関係−を挙げ、「世界のユダヤ人に北京五輪への参加中止を求める」と訴えた。
全米ユダヤ人会議は、ローゼンブラット副会長らが4月28日に中国の周文重駐米大使と会談し、チベット、ダルフール問題などへの懸念を伝えていた。また、ワシントンのホロコースト記念博物館では、ベルリン五輪に関する特別展が4月下旬に始まるなど、在米ユダヤ人社会では、北京五輪に批判的な空気が強まっていた。