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【社説】

暫定税率 不信増幅させた再可決

2008年5月1日

 本来、再可決はみだりに行使すべきではない。補選で直近の審判が下ったのだからなおさらだ。与党は構わずガソリン税の暫定税率復活へ突っ走った。国民の政治不信が増幅するのを懸念する。

 衆院補選で民主党が勝利し、世論調査でも六割前後が再可決反対だった。租税特別措置法改正案の衆院再可決後に記者会見した福田康夫首相は、入念に用意した文章を丁寧に読み上げ、国民に理解を求めた。不満は分かる、苦しい判断だった、とも胸の内を語った。

 言い分はこうだ。改正案を参院送付後二カ月も野党が放置したのは残念だ、歳入不足が継続する無責任な状態を解消する必要があり、やむを得なかった−。

 首相が指摘する通り、民主党が政局優先の対応をしたことはほめられたものではない。だからといって、道路特定財源の無駄遣いが次々と判明する中、三十年以上も続く「暫定」税率をそのまま認めよと、政府・与党がいうのは無理がある。首相自身、問題点の多さは認めているのだから。

 本来こういう説明は再可決の前にすべきだった。町村信孝官房長官は「賢明なる国民は理解すると確信している」と語った。そう断言する前に、家計のやりくりに苦しむ国民生活を直視し、野党に歩み寄れなかったのか。

 首相は二〇〇九年度からの道路財源の一般財源化を十二日にも閣議決定し、法案の年内策定を明言した。一般財源化は「生活者が主役となる行政への転換」「道路財源を生活者財源にする」とも。

 ただ、法案化になぜそんなに時間をかけるのか。教育、社会福祉などへ使途を幅広くするにしても、政権の存続さえ疑問符が付いているのだ。道路族の反撃で有名無実化しかねないことを危惧(きぐ)する声があるのも無理はない。

 首相は道路財源を十年維持する特例法改正案を十三日に再可決する意向だ。民主党は特例法を撤回するか、大幅に書き直すことが一般財源化を確実にするといっている。その通りではないか。野党と協議するというなら、ここがポイントである。

 首相はガソリン税をめぐる世の中の混乱について「ねじれのせいと片づけるつもりはない」と、率直に自らの責任も認めた。しかし、後手批判は高まる一方だ。値上げ直前にガソリンスタンドで行列をつくった消費者の不平不満はおそらく一過性ではないだろう。甘く見ない方がいい。

 

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