日銀が二〇〇八年度の成長率見通しを下方修正した。世界的な金融不安が背景にあるとはいえ、政治情勢もマイナス要因だ。「政策不在」が景気後退を加速させるようなことがあってはならない。
景気の先行きが心配になってきた。日銀はこれまで、やや楽観的な見方に傾斜していたが、今回の「経済・物価情勢の展望」(展望リポート)では一転して、先行きに対する慎重さをにじませた。
リポートは〇八年度の実質成長率見通しを前回〇七年十月の2・1%から1・5%(いずれも政策委員見通しの中央値)に引き下げた。
サブプライムと呼ばれる信用力の低い人向け住宅ローン問題は解決の兆しが見えない。米政府当局者からは「最悪期を脱した」との声も聞かれるが、市場関係者や専門家の間では「甘すぎる」と厳しい反論が出ている。
米銀大手のシティグループは四回目の資本増強に踏み切った。時間の経過とともに、損失が雪だるま式に膨れ上がって、増資が損失の償却に間に合わない悪循環が続いているのだ。
国内でも、農林中金のサブプライムローン関連損失が三月期決算で一千億円前後に拡大する見通しだ。発信源になっている米国で住宅価格の値下がりが止まらない限り、世界的な金融不安は当分、続く、とみて間違いない。
加えて、記録的な高水準にある原油をはじめ原材料価格も高騰している。日本国内をみると、堅調な設備投資などプラス材料もあるが、全体としては経済環境は厳しさを増している。
物価も上がり始めた。穀物価格の上昇を反映してパンやめん類、しょうゆ、ビールなど身近な食品類が一斉に値上がりしている。ガソリン税の暫定税率復活は個人消費を直撃しそうだ。日銀リポートも〇八年度の消費者物価指数(生鮮食品を除く)の上昇率をプラス1・1%と上方修正した。
三月の失業率は3・8%と小幅改善したが、新規求人は大幅に減少しており、こちらも先行きを楽観できない。
日銀は警戒感を高め、今後の展開次第では利下げも視野に入れて柔軟に対応すべきだ。ねじれ国会の難しさがあるにしても、福田政権の景気に対する無関心さはどうしたことか。経済財政諮問会議の存在感も薄れている。
日銀副総裁は相変わらず、空席のままだ。政権は経済運営に本腰を入れて臨んでほしい。
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