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【主張】歳入法再議決 一般財源化の工程表を 民主は建設的な役割果たせ
揮発油(ガソリン)税など道路特定財源の暫定税率を復活させる歳入関連法案が衆院の再議決により成立し、国と地方合わせて2兆6000億円の財源に穴があく事態は回避された。
歳入欠陥や地方自治体の混乱がこれ以上拡大するのを防ぐため、政府・与党が憲法に定められたルールに基づいて再議決に踏み切ったのは当然だ。56年ぶりという異例のみなし否決による再議決となったが、暫定税率失効後も参院での採決を怠ってきた民主党の政争重視の対応にこそ問題がある。
≪参院を問うみなし否決≫
今後の焦点は、揮発油税を今後10年間道路整備に充てる道路整備特別措置法案の処理だ。道路特定財源を来年度から一般財源化する政府・与党合意をどう担保するのか。福田康夫首相は工程表をより明確にしてほしい。
暫定税率が復活したとはいえ、失効期間が1カ月に及んだことから国、地方合わせて1800億円規模の税収減が避けられないという。また、道路整備特措法案が成立していないため、国から地方への地方道路整備臨時交付金を配れない状態が続いている。
自治体ごとに緊急度の低い道路工事を延期するなどの措置をとってしのいでいるものの、生活に関連の深い道路工事の見直しも余儀なくされている。国の直轄事業として行われる道路整備は、一部凍結されることも予想される。
民主党は、ガソリン価格の下落が国民にとっての減税効果になっていると宣伝してきた。この財源なき減税が消えたとはいえ、それが政府の手による値上げ強行策だといくら主張しても、ガソリンの乱高下や自治体の混乱を招いたことへの批判は免れまい。
残念なのは、憲法59条の規定にある参院送付後60日経過による、みなし否決となったことだ。
年をまたいで与野党攻防が続いた新テロ対策特別措置法も、再議決で決着がついた。テロとの戦いへの参加に空白を生じて国益を損なったが、60日経過の直前に参院で採決(否決)が行われ、第二院の意思はかろうじて示された。
野党側は政府・与党による再議決を「みなし否決による再可決は民意を無視するものだ」と反発しているが、話があべこべである。政府案に反対なら、一定の審議を経た後に国会の議決で意思表示をするのが筋だろう。
みなし否決となったのは、ねじれ現象を政局にフル活用している民主党の姿勢を象徴している。昨年の選挙で多数を与えられた参院の存在意義を、みずから否定する行為ではないか。
首相は28日の公明党の太田昭宏代表との与党党首会談で、道路特定財源の一般財源化を具体的に検討する与党協議会を設置し、必要な法改正を進めていくことで合意した。5月中旬の特措法案の再議決に合わせ、一般財源化方針の閣議決定も行うという。
≪欠かせぬ特措法案修正≫
一般財源化を閣議決定で正式に位置付けるのは当然だとしても、揮発油税と道路整備を結び付ける特措法案をどう見直すかは不透明なままだ。特措法案を1年限りに見直すのが大前提だろう。
また、年度内に必要な法改正とはどんな内容なのか。暫定税率は残すのか。本則化する場合は税率をどの程度にするのか。環境税の導入をどう関連づけるのか。それくらいの大筋の方向性は、与党協議会に委ねる前に首相が国民に対して示すべきだ。30日夜の記者会見の説明も物足りなかった。
一般財源化の基本方針を閣議決定するだけでも道路族議員との調整は難航が予想される。特措法案の再議決前に首相が決断すれば、民主党が修正協議を受けざるを得ない局面になるかもしれない。
民主党は首相に対する問責決議案提出について、特措法案の再議決に照準をずらしたという。まず問責決議案ありきの姿勢が、国民の支持を得ていると本気で考えているのだろうか。首相の一般財源化に向けた本気度をただし、特措法案の修正論議を主導しようという党内意見を尊重することだ。
昨年秋の福田首相との党首会談の後、小沢一郎代表が民主党の政権担当能力への疑問について自ら言及したことがあった。
一般財源化が実現したら、すべて首相の手柄になってしまう。もし、そんな心配をしているなら、了見が狭すぎる。民主党はむしろ力量を示す好機とすべきだ。