トンネル抜けると海! 借金返済には特定財源 和歌山2008年05月01日01時39分 和歌山県太地(たいじ)町に、海に向かって口を開けて行き先のないトンネルがある。約6億円かけて12年前に完成したまま放置されている県道の一部。橋を架けて湾の対岸と結ぶ計画だったが、財政難で頓挫した。使い道のない事業の借金返済には道路特定財源も充てられている。
JR紀勢線の車窓から一瞬、海辺の山肌にぽっかりと黒い穴が見える。96年に完成した県道勝浦港湯川線の「岩屋トンネル」(全長176メートル、幅10.75メートル)だ。 県によると、県道は78年に都市計画決定され、両端の計2.4キロは80年代に開通した。残った未開通区間の約1.6キロは94年に着工され、岩屋トンネルなど計780メートル分が歯抜け状態で完成。だが、他の部分は手つかずのまま02年に工事が止まった。01年に誕生した小泉政権が「改革」を訴えて公共投資関連予算を削ったからだ。 完成部分にかかった17億円の約7割は地方債でまかなった。大半はバブル経済崩壊後の景気対策として大量に発行された地域総合整備事業債。国が償還の多くを負担する仕組みで、道路特定財源などが充てられる。県の08年度予算には償還分を含む道路整備に計752億円が計上され、道路特定財源は少なくとも22%以上を占めるという。 県の担当者は「優先順位の高い道路から工事する『選択と集中』を徹底しており、現在の財政状況では再開の見通しはない」と言う。 岩屋トンネルの海とは反対側には約10軒の集落がある。住民の間には「すぐに必要な道路ではない」との声がある一方で、「全線開通すれば那智勝浦町の市街地まで自転車で買い物に行ける。道路はできた方がいい」と工事再開に期待する人もいる。(松尾一郎) PR情報社会
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