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2008年5月1日

◎暫定税率の復活 値上げは与党に高く付きそう

 与党はタカをくくっているのかもしれないが、暫定税率の復活に伴うガソリン価格の「 値上げ」は、高く付くだろう。財源を示さずに暫定税率復活に反対する野党の無責任さも批判されてしかるべきとはいえ、政府・与党の側にはさしたる知恵もなく、改革の意欲に乏しかった。福田康夫首相が打ち出した道路特定財源の一般財源化は、閣議決定の見通しというが、若手の造反をにらんでの「ガス抜き」の意味合いが強く、現実問題として、どれほどの意味を持つのか疑問である。

 ガソリン価格の値上げで、石川県、富山県でも今月上旬以降、車を満タンにすると千円 以上も支出が増えることになり、家計へのダメージは大きい。民間シンクタンクの調査では、値上げに伴う負担割合は北陸地区が最も高いというデータもある。私たちはこうした痛みを半減させるために、暫定税率を単純に復活させるのではなく、半分程度に抑える提案をしてきた。しかし、政府・与党は本質的な論議に踏み込まず、民意に十分こたえる努力をしなかった。ガソリンの値上げに対する国民の不満を甘く見ていると、強烈なしっぺ返しをくうだろう。

 道路特定財源の暫定税率を復活させる税制改正法案の可決で、年間税収二兆六千億円の 穴を埋めるメドが立った半面、ガソリン価格は折からの原油値上げを織り込んで、一リットルあたり百六十円と三十円前後値上げになる見通しという。政府・与党は「税率が元に戻っただけ」と言うだろうが、それでなくとも今年四月から小麦が30%値上げされるなど、物価高がじわり浸透してきている。ガソリン価格の値上げは最悪のタイミングで消費者心理を冷やし、景気に悪影響を及ぼすのは間違いない。

 ただし、民主党など野党の姿勢も評価できない。福田首相が一般財源化を打ち出したと き、民主党は協議に応じ、さらなる譲歩を引き出すべきだった。一時的にガソリン価格を下げたことに満足し、実を取る努力に欠けていた。政局に絡めることにばかり熱心では、多くの国民の支持は得られないだろう。混乱のツケは与野党双方に重いと言わざるを得ない。

◎技術専門校で社員指導 中小企業に心強い「援軍」

 県が金沢産業技術専門校で行う製造業の若手社員を対象にした技術力向上支援セミナー は、人材育成に悩みを抱える中小企業にとって心強い「援軍」となる。

 大企業に比べて中小企業は、社員教育に投入するマンパワーや資金、時間が不足しがち である。このため企業の人材力、競争力が高まらず、企業活動が伸び悩んで人材確保がさらに困難になるという危険性が指摘される。こうした人材の育成をめぐる悪循環に陥らないため、外部から手を貸すのは行政の役割といえる。

 県などによると、慢性的に労働力が不足する中小メーカーでは、即戦力となる工業高校 生の「機械離れ」で、ものづくりの未経験者や技術力不足の人を採用せざるを得ないケースが増えている。管理職や先輩が職務を通して部下を訓練するOJTが普及しているが、そのシステムが確立されず、見よう見まねでやっている企業もあるといわれている。こうした中小企業のために、行政が若手社員の教育の場を用意する取り組みは積極的になされてよい。

 技術力支援セミナーでは機械製図や測定、NC旋盤など六つの基礎コースが用意される 。今後は技術指導だけでなく、中小企業が自力で行うのが難しい能力開発プログラムの作成や従業員のメンタルヘルス対策などの支援も進める必要があるのではないか。

 また、技術指導を行う産業技術専門校そのものの機能強化も喫緊の課題である。県は先 ごろ、企業立地促進法に基づく地域産業活性化計画を策定し、経済産業省の同意を得たばかりである。計画では県と全十九市町が一体となり、機械・繊維・食品・ITの四つの基幹産業の集積を促進し、今後五年間で百三十件の新規・増設立地をめざすという。この目標実現の大きなカギは、人材の育成・確保であり、産業技術専門校の機能強化も掲げられている。

 県は金沢産業技術専門校の授業内容や設備などを拡充する考えであり、今年度中に再整 備の基本計画をまとめる予定である。産業人材の育成拠点にふさわしい内容にしてもらいたい。


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