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2008年04月30日
ジャン:2009年5月21日から、裁判員制度が始まるって聞いたけど、どういうこと?
河原田記者:殺人や放火などの大きな事件で、一般市民が裁判に加わるんだ。
ケン:法律のことなんて分からないのにできるの?
河原田記者:裁判の流れや法律など、必要なことは裁判官が説明してくれるよ。裁判員になるために特に準備しておくことはないんだ。
ジャン:裁判員はどうやって選ぶの? わたしも選ばれるの?
●一般市民も参加し「わかりやすく」
◆20歳以上の人をくじで選ぶ 罪の重さを話し合って決定 「やりたくない」人が4割も
河原田記者:裁判員は選挙に行ける人の中から選ぶから、20歳以上だね。市町村にある名簿から、くじで選ぶんだけど、約4000人に1人の確率とも言われているから、大人になったら選ばれるかもしれないね。
ポン:何で裁判官だけでやらないの?
河原田記者:例えば罪の重さを決めるにも、法律のプロだけでなく、いろんな人の感覚や意見を採り入れた方がいい。今までと同じ3人の裁判官に、一般市民六人が加わるよ。進め方を分かりやすくして、裁判をもっと身近に感じてもらおうという考えもあるんだ。
ジャン:ほかの国でもやってるの?
河原田記者:アメリカでは市民の「陪審員」だけで、有罪かどうかを決める。フランスやドイツでは裁判官といっしょに、有罪かどうかだけでなく罪の重さも決めるんだ。韓国では日本の裁判員制度に近い制度が2月に始まったよ。
ケン:裁判って何か月もかかるんじゃないの。その間ずっと裁判員をするの?
河原田記者:裁判員が参加する裁判は表のような流れで行われるんだ。裁判員は被告人(うったえられた人)、弁護人、検察官(警察官といっしょに犯罪の捜査をして、犯人と思う人をうったえた人)の話を聞いて、ほかの裁判員や裁判官と話し合い、有罪かどうかだけでなく、どれくらい罪が重いかも決めるんだよ。
裁判を始める前に、どこがポイントになるかを裁判官や弁護士などがしぼりこむから、裁判員が加わる裁判は、多くが3日以内で終わるとされているんだ。1日1万円以内のお金や、交通費も出るんだよ。
ポン:パパは出張が多いし、おばあちゃんは病院に行く日が多いから、無理じゃないかな。
河原田記者:70歳以上のお年よりや、その人がやらないと仕事の上で大きな損害になってしまう人、子育てや介護などでどうしても行けない人などは、参加を断ることができるんだ。
ケン:でも殺人事件の裁判なんて、なんだかこわいなあ。うらまれたりすることはないの?
河原田記者:裁判員の名前や住所は外部に出してはいけないと法律で決められている。ただそれでも裁判員やその家族が危険な目にあう可能性がある事件は、裁判官だけで裁判をしてもいいことになっているんだ。
ジャン:裁判での話し合いで、うまく意見が言えるかなあ。それに全員の意見ってなかなかまとまらないと思うけど。
河原田記者:思ったことはどんどん言っていいし、話し合いの途中で意見を変えても自由だよ。確かに9人で意見をまとめるのは大変だけど、十分に意見を出し終えたら、最後は多数決で決めるんだ。そのときは裁判官も裁判員も同じ一票と考えるんだよ。
ケン:責任が重いと思うけど、みんなやりたがっているのかな?
河原田記者:最高裁判所が4月1日に発表した調査結果では、「やらないといけないと言われてもやりたくない」と答えた人が四割近くいた。裁判員制度は9割以上の人が始まることを知っていたから、うまくスタートさせるにはこれからのPRが課題だね。
●きょうのポイント
▽裁判員制度が、2009年5月21日から始まる。裁判員は裁判に立ち会って、被告人や検察官の話を聞き、罪の重さなどを裁判官と話し合って決める。
▽裁判員は、20歳以上の人が、市町村ごとにくじで選ばれる。およそ4000人に1人の割合。
▽重大な事件で、法律のプロ以外の意見を採り入れ、分かりやすい裁判を行うのが制度の目的。
記者:河原田慎一記者(朝日新聞社会グループ)
提供:朝日学生新聞社
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