「救急医療あり方検討会」がヒアリング

 厚生労働省の「救急医療の今後のあり方に関する検討会」は4月30日、救急治療を終えた患者を受け入れる療養病床を持つ病院や救急医療の関係者らからヒアリングし、医療現場での救急受け入れ不能問題などの解決策を話し合った。この中で、国立病院機構大阪医療センター(大阪市)の定光大海救命救急医療センター長は、救急患者の受け入れ要請が増加する一方、自殺企図のある患者や脊椎(せきつい)損傷といった重症患者などは、救急医療を終えた後の転院先を探すのが困難な状況にあるとの認識を示した。

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 検討会はこの日の意見も踏まえて6月中に中間報告をまとめる。必要経費は2009年度の予算要求に盛り込みたい考え。検討会では当初、三次救急医療機関の整備方針に限って議論してきたが、医療現場による救急患者の受け入れ不能問題が深刻化しているのを受け、二次救急の現状などについても中間報告に盛り込む見通しだ。

 定光氏によると、同センターでは2006年12月ごろから受け入れに対応できないケースが増え始め、07年には1,083人の救急患者を受け入れたものの、対応できないケースも600人以上に達した。
 また、急性期治療を終えた患者の転棟・転院先が見つからなかったため、入院期間が1か月以上になったケースが22例あり、このうち2例では6か月以上に達した。特に、▽自殺企図による外傷▽脊椎損傷▽医療依存度の低い寝たきり▽生活困窮―などの患者で転院が困難になり、長期入院につながりやすいという。

 定光氏は「後方病床で経過を見るため、一定期間を置いた患者の受け入れを(急性期病院に)お願いするのは極めて困難。どの患者を受け入れるかの選択権は受け入れ側にある」と述べ、こうした状況が救命救急センターの長期入院につながっているとの見方を示した。

 一方、医療法人社団康明会(東京都日野市)の遠藤正樹事務局長は、06年の診療報酬改定に伴い、患者の重症度に応じて診療報酬に差をつける仕組みが療養病棟に導入されたことが、二次、三次救急医療機関からの患者の受け入れを困難にしているとの見方を示した。

 遠藤氏によると、康明会が運営する日野田中病院では新たな仕組みが導入された同年7月の受け入れ割合が、前月から14ポイントダウンした。遠藤氏は、二次、三次救急医療機関から受け入れ要請のある患者では診療報酬の低くなるケースが多いと指摘。現状の報酬設定では受け入れがますます困難になるとの見通しを示し、軽症患者についての報酬を入院から6か月間は高くするなどの見直しを求めた。


更新:2008/04/30 22:02     キャリアブレイン

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08/01/25配信

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医師の山田規畝子さんは、脳卒中に伴う高次脳機能障害により外科医としての道を絶たれました。しかし医師として[自分にしかできない仕事]も見えてきたようです。