File Created Date 01/10/01

 

 


◆インドの最高神ヴィシュヌの化身(アヴァターラ)とは?

  1. ヤジュニャ・プルシャ(猪)
    大地がまだ大海の底に沈んでいた原初、造物主ブラフマーは自らの鼻孔から猪の姿をしたヴィシュヌの化身を生み出した。それがヤジュニャ・プルシャである。猪は見る見るうちに山のように大きくなり、水中に飛び込むや、その牙で大地を救い上げたという。悪魔ヒラニヤークシャを殺したことで知られる。最後は、武神インドラの弓にかかり殺される。
  2. ナラシンハ(人獅子)
    ヒラニヤカシプ(ヒラニヤークシャの兄弟)は兄の仇であるヴィシュヌ神への復讐を誓い、激しい苦行を行った。その結果、彼はブラフマーが創造したいかなる者たちによっても――人間によっても、獣によっても、神々やアスラによっても殺されない不死身の身体を獲得した。そこでヴィシュヌ神は人間でも獣でもない姿、すなわち人獅子ナラシンハの姿をとり、悪魔ヒラニヤカシプを殺した。
  3. アクーパーラ(亀)
    神々とアスラが不死の霊薬アムリタを得るために大海を攪拌しようとした際、マンダラ山に大蛇ヴァースキを巻きつけ攪拌棒として用いた。しかし、マンダラ山はその重みに耐え切れず次第に海底に沈み始めたため、神々は大慌てとなった。そこでヴィシュヌ神が巨大な亀の姿を取り、大海に飛び込んでマンダラ山をその背中で支えた。
  4. ヴァーマナ(朱儒)
    ヴィシュヴァジット(一切征服)の権限を与えられ無敵となった魔王バリは、魔軍を率いてインドラの都に攻め入り、神々を駆逐してそのまま三界(天界・地上・地底界)を征服した。これを見たヴィシュヌ神は神々しい朱儒の姿を取り、神々の母アディティの息子として地上に生誕した。彼がバリの祭場に出かけた時、バリは朱儒を気に入り、何でも望みのものを与えると約束した。すると朱儒は自分が3歩で歩けるだけの土地をくださいと要求した。バリが快く聞き入れると、朱儒はたちまち三界にわたる巨大な姿となり、第一歩で全地上を、第二歩で天界全体を踏みしめた。朱儒は第三歩でバリの頭を踏みしめ、その偉業により全ての悪魔を征服した。悪魔たちは残された地底界に逃げ込んだ。
  5. マツヤ(魚)
    ある日、王仙サティヤヴラタがクリタマーラー河で水の供養を行っていると、掌の中に偶然にも一匹の魚が入り込んだ。彼が魚を川に放そうとすると、魚は自分を捨てないでくださいと嘆願した。そこで彼は魚を容器に入れ、大きくなるまで養ってやることにした。魚は凄まじい早さで成長し、それに合わせサティヤヴラタも次々と容器を変えたが、そのたびに魚は巨大な姿となり、ついには海に放さざるを得なかった。その時、彼は魚の正体がヴィシュヌ神であることを悟った。魚の姿をしたヴィシュヌ神は言った。「7日後に全世界は水没する。そのとき、私が放った巨船が汝のもとに着くであろう。汝は七人の聖仙とともに、あらゆる種類の草や種、あらゆる生類をともなってそれに乗りなさい」。はたして予言通りに大洪水が起こり、サティヤヴラタは巨船に乗り込み大洪水を乗り切った。巨船はヒマヴェット(ヒマラヤ)山に漂着し、その後、サティヤヴラタはマヌ(人類の始祖)となった。
  6. ラーマ・チャンドラ
    マハーバーラタと並び賞される国民的一大叙事詩ラーマーヤナの主人公。妻のシーターを誘拐した羅刹王ラーヴァナを始めとする多くの悪魔たちを討伐した英雄である。彼の詳細な事績に関しては分量が多いためここでは割愛する。
  7. パラシュラーマ
    …<準備中>…
  8. クリシュナ
    …<準備中>
  9. ブッダ(ゴータマ・シッダールタ)
    …<準備中>…
  10. カルキ
    上記九つの化身はヴィシュヌ神の過去の顕現形態であり、過ぎ去った属性であるが、カルキだけはいまだ現れないヴィシュヌの化身、すなわちヴィシュヌの未来世の顕現形態を予言したものであり、ヒンドゥー教独特の終末論を生み出した。カルキはカリ・ユガ(末世)の時代に、悪しき道徳の道を歩む邪悪な連中を一掃するために、シャンバラ村のヴィシュヌヤシャスというバラモンの家に生まれる。彼は剣を持ち、白い駿馬(白馬自体ヴィシュヌの化身であるとする説もある)にまたがり、悪徳に蝕まれた退廃の世滅ぼし、そして更新するために現れる。世界から全ての悪が消えた時、人々の心は浄化され、クリタ・ユガの時代が再び始まるのである。こうした救世主概念はインド神話と神々の起源を同じくするゾロアスター教にも存在する。ゾロアスター教の救世主はサオシュヤントと呼ばれ、ヒンドゥー教のユガと同様、4期の終わり(拝火教では三千年を区切りとして世界は一万二千年で一巡するとされる)に邪悪な世界を灼熱の溶鉱で滅ぼし、世を立て直すために現れるとされる。こうした終末論は後にキリスト教に受け継がれることになる。

 ヴィシュヌ神が十の仮の姿を取って、地上に顕現したことはよく知られている。ヴィシュヌ神の十の化身はそのまま神の十の属性を表し、全体として一つの宇宙的な神の姿を表している。すなわち、生命の樹である。生命の樹にはセフィロトと呼ばれる神の諸力・属性を表す10個の球体が付けられている。セフィロトは絶対神ヤハウェが地上に顕現する際の10の属性を表しており、それはまさしくインド神話におけるヴィシュヌ神(=ヤハウェ=イエス・キリスト)の十の化身として顕在化しているのだ。また、生命の樹の裏に隠されたセフィロト“ダアト”は、十の化身(神的属性=セフィロト)の背後に存在する神の実体を表し、インド神話における天界のヴィシュヌを象徴している。

生命の樹の寓意画
生命の樹。カバリストたちは“神のかたち”とも呼ぶ。

 



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Last Modified Date 03/04/08

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