長野県内のニュース

フロント > 県内ニュース一覧 > 記事詳細

「平和の祭典」 対峙、怒号、逮捕者…沿道は緊迫も

4月26日(土)

 厳戒態勢の長野市で26日行われた北京五輪の聖火リレーは、コース沿いに集まって国旗を振る中国人らと、チベット旗を掲げる支援者らがあちこちで対峙(たいじ)し、出発前から小競り合いが起きた。怒号が飛び交い、聖火ランナーめがけて物が投げ込まれ、逮捕者が出た。「平和の祭典」からは程遠いイベントになった。

 出発から15分、約100人の警察官が取り囲む聖火ランナーの一団がJR長野駅前に差しかかったとき、にこやかに走っていた萩本欽一さんに向けて、紙やペットボトルのような物が投げ入れられた。警察官が沿道に出て、もみ合いの末に日本人の男1人を連行。直後には男がコース上に出ようとして現行犯逮捕され、一気に緊迫した。

 卓球の福原愛さんのリレー中にも、「フリーチベット(チベットに自由を)」と叫びながら外国人の男がコースに飛び出し、警官に地面に組み伏せられた。近くに店を構える60代の男性は「まさか日本で騒ぎが起きるなんて」。

 さらに1時間半後、栗田の長野朝日放送(ABN)前では、中国人とみられる男性が頭を殴られてけがを負い、救急車で運ばれた。15人から20人ぐらいの集団が、中国国旗を女性から奪い取ろうとし、女性を守ろうとした男性を鈍器のようなもので殴ったという。ほかにも各所で中国人男性がけがをする小競り合いが続いた。

 人権擁護団体のアムネスティ・インターナショナル日本は「五輪前に人権公約を守れ」などと記したプラカードを掲げ、中国国旗を持った中国人らに「あなたたちはだまされている」と詰め寄られる場面も。国際ジャーナリスト組織「国境なき記者団」の外国人メンバーは、手錠の絵で五輪マークをあしらった旗を大門交差点付近で無言で広げた。

 中央通りの権堂アーケード入り口付近では、応援を終えて移動していた中国人ら数十人と、チベットの旗を掲げた数人がもみ合い、中国人とみられる男性がチベットの旗を踏み付けた。旗を踏まれた男性は日本語で「暴力はいけない」。

 長野駅前では、ランナーが通過して2時間たっても数百人がにらみあった。警官越しに「フリーチベット」「ワンチャイナ(中国は1つ)」の怒鳴り合い。通り掛かった若い女性は「買い物に行きたいのに怖くて足が止まってしまった」とおびた。

 一方、前夜からバスに乗って訪れた中国人留学生や中国残留孤児の帰国者は、「中国頑張れ、日本頑張れ、長野ありがとう」などと冷静に応援。学生たちは「各国の友好と平和のために来た」と話した。

 沿道を埋めた中国人から何度も「おはようございます」とあいさつをされたという長野市西和田の会社員、松井浩和さん(45)は「一部には過激な人もいるらしいがほとんどの人はにこやか。仲良く応援し合えて良かった」と話していた。