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【社説】

アジア米騒動 今『主食』を見直したい

2008年4月30日

 世界的な穀物不足のうねりに、自給率39%の「食料小国」は耐えきれない。小麦や大豆の買い付けに奔走しながら、コメの生産調整に心を砕く。そんな矛盾は、早く解消しておかないと。

 「飽食の時代」は、もう終わったと言っていい。

 人口増加、新興国の急激な経済成長、バイオ燃料需要…。こうした条件が重なり合って、二〇〇八年の穀物在庫は過去二十五年間で最低の水準に落ち込んだ。

 食料の「囲い込み」が世界規模で強まる中、アジアではさながら「米騒動」の様相だ。

 世界第二位のコメ輸出国だったインドと第三位のベトナムが、国内需要を優先して今月までに、事実上の禁輸に踏み切った。一位のタイの供給余力も限界に近い。

 七月の北海道洞爺湖サミットでも、地球温暖化対策と並んで、世界食料危機への対応がクローズアップされてきた。ホスト国の日本は、国際的な視点に立ち、生産、消費両面から「主食」のコメを見直す必要があるだろう。

 日本では、大半を輸入に頼る小麦や大豆の高騰にあえぐ半面、米余りに悩み、生産調整の達成に頭を痛めている。「食料争奪」の時代を生き抜くためには、このアンバランスの解消が急務になる。

 農林水産省は、高騰する小麦の代替品として米粉に着目し、生産支援に乗り出した。しかし、現在米粉の生産量は、小麦粉のわずか2%。補助金で“奨励”する従来の手法では、米粉パンや米粉めんの定着は難しい。

 「食」はもともと地域の気候や風土に根差したものだ。全国一律の減反政策に失敗したのもそのためだ。消費者に米を見直し、米粉を食べてもらうには、地域戦略が欠かせない。

 北海道では、「食べて応援!」を合言葉に、わが家のご飯を道産米に切り替える「米チェン(チェンジ)」キャンペーンを軌道に乗せつつある。

 地域や学校で今なぜ米食なのかを「食育」として学び合い、その実情や風土に見合ったアイデアを出し合いながら、まず着実に地産地消を定着させるべきだ。

 国際貢献も同様である。値崩れしても日本のコメは、アジア各国に比べればはるかに高い。すぐに輸出は増やせない。アフリカの実情に適した「ネリカ米」の普及に参画したように、アジアの風土に見合う米の生産効率向上に、日本の高い栽培技術を生かしたい。

 

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