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【社説】

電波の“空き地” 家庭利用にも目配りを

2008年4月30日

 テレビ地上波のデジタル化で発生する電波の“空き地”利用の検討がヤマ場を迎えている。電波は国民の貴重な共有財産だ。家庭での電波利用にも配慮して将来を見据えた議論を期待したい。

 現在のアナログ波による放送は三年後に予定されるデジタルへの完全移行で停止され、アナログに使用していた電波帯が“空き地”となる。

 この“空き地”活用をめぐり、テレビ、ラジオ、携帯電話などの放送・通信関連企業にニュービジネスを目指すベンチャー企業などが加わって、水面下で陣取り合戦さながらの動きが始まっている。

 表舞台となっているのが、総務省の懇談会だ。防災用など公共向け電波を確保したうえで、残りの活用法について企業や団体の意見聴取を行い、一部の懇談会は六月にも報告書をまとめる予定だ。

 懇談会と名付けてはいるが、関係者の意見がまとまれば報告書に沿った方向で法整備が進む可能性が高い。

 気になるのは、家庭や個人のインターネット接続方法として期待される無線電波の必要性を主張する声が少ないことだ。

 現在、各家庭のネット接続用として光ファイバーの設置が進められている。だが、集合住宅、個人住宅ともに建物の構造上、光ファイバーの引き込みが難しいケースは少なくない。

 そこで世界的にも期待されているのが電波による接続だ。すでに別枠の周波数で導入が進められているが、利用が拡大すれば、やがて足りなくなる恐れがある。

 家庭向けは企業サイドからは光ファイバーとの競争があり、うま味が少ないのかもしれない。

 だが、家庭での電波利用は政府の基本戦略でも重要性が確認されていたはずだ。現在の放送や携帯事業を延長したような利用計画ばかりでは将来に禍根を残すのではないか。

 「どこでもコンピューター」と称されるユビキタス社会ともなれば、電化製品はもちろん衣服や身の回り品にまで小型素子が組み込まれ、素子同士は電波で結ばれる。ユビキタス社会を生かすには、光ファイバーよりも電波の方が使い勝手がよいはずだ。

 たとえ現時点で企業の要望が少ないとしても、家庭の内外を結ぶ電波は必要になる。大切なのは、今後、どのような新技術が生まれても柔軟に対処できる政策配慮ではないか。

 

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