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2008年4月30日

◎こだわり食材ネット まず出身者のファン増やそう

 有機米や風土色あふれる野菜など、特色ある県産食材の生産者が「加賀・能登こだわり 食材生産者ネットワーク」を発足させ、首都圏の百貨店で一体的に試験販売することも決まった。希少性の高い特産品だけに、県出身者や県ゆかりの人など、その食材の魅力を知り、わずかでも価値を実感している人を中心にファンを増やしていきたい。

 首都圏には、石川県人会をはじめ、昨年発足した金沢市出身者らでつくる「TOKYO 金澤CLUB」や、加賀市の「東京加賀江沼のもん会」など、市、町レベルで県人組織があり、今年秋には、都内で千人規模の大交流会も開かれる。北陸新幹線開業を控えて「ふるさと意識」が高まってきている折でもあり、こうした県出身者らにこそ大いにPRし、心強い石川の食の応援団にしたい。

 こだわり食材生産者ネットワークは、石川特産の「こだわり食材」に取り組む生産者同 士が、横のつながりを深め、自発的に消費者が求める食材を把握し、広くPRしていく組織として発足した。古代米、加賀丸いも、金糸瓜、ころ柿などから、いしる一夜干し、能登ワインなども含めた多様な食材の生産者四十五人が参加する。

 今後は伊勢丹新宿本店のアンテナスペースなどに出店を予定し、食品、流通関係者らに 県産食材の魅力を伝える。生産者ができるだけ多くの消費者側と交流を持つことが大切だが、扱う商品が多岐にわたるだけに、「太平洋に目薬」的な大づかみで印象に残りにくい結果にならないようにしたい。

 まずは「石川産」というキーワードを柱に据え、出身者らのネットワークを最大限に活 用する価値はある。たとえば共同出店する際には、県も力を貸し、県人会などの組織に出店案内を出すような配慮があっていい。

 また、かつて加賀藩の下屋敷があり加賀藩学講座が盛況だった東京・板橋区や、食を通 じた能登ファンを増やす試みを企画しているNPO法人能登ネットワークを通して、出身者に準じる石川ゆかりの人脈にも情報を発信したい。消費者としての助言も、より新鮮で中身が濃くなるのではないか。

◎自動車関連企業誘致 出遅れをばん回したい

 東海北陸自動車道が七月五日に全線開通するのに併せ、県は中京圏から能登地区への企 業誘致に力を入れる。狙いは自動車関連企業である。県は八月にトヨタ自動車との商談会も開き、県内企業の技術、製品をトヨタに売り込む。いずれも時宜を得た取り組みであり、東海北陸自動車道の開通を機に、裾野の広い自動車関連企業の誘致や地元企業との取引拡大をめざしたい。

 ただ、自動車産業の世界的な生産・投資の拡大を受けて、関連企業の誘致競争はたいへ ん激しく、この分野の地域間競争で石川、北陸は出遅れの感が否めない。トヨタのお膝元である中京地区との時間距離を短縮する東海北陸自動車道の開通で、北陸の地理的優位性が高まることは間違いなく、他地域に負けない取り組みを官民一体で強化してもらいたい。

 自動車関連企業の取り込みに力を入れる他地域の動きをみると、例えば東北六県は「自 動車産業集積連携会議」をつくり、東北を自動車産業の一大拠点にする共通目標で結束する一方、各県独自の戦略で誘致にしのぎを削っている。各県の具体的な施策では、自動車関連分野への新規参入や取引拡大に意欲を持つ企業に対して、生産技術の向上や受発注機会の拡大、人材育成などの支援事業を展開したり、名古屋に置く県の出先機関を強化し、現地メーカーのOBらを誘致専門員に任命するなどそれぞれ知恵を絞っている。

 また、既に自動車本体や部品などの生産工場の集積が進んでいる北部九州の各県は、連 携を強めながら一段と攻勢をかけている。自動車関連企業の誘致実現には、これらの地域に引けを取らない施策と行動が必要であり、生半可な取り組みでは競争に勝てない。

 県は東海北陸自動車道の開通に加えて、地元での人材確保の容易さを利点に挙げるが、 最近の労働市場の大きな流れをみると、これまで大都市圏で主に人材を確保してきた大手企業が地方の学生採用に力を入れ始めており、この面の競争も厳しさを増している。地域の産業人材の育成、確保はまさに待ったなしの課題である。


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