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深層・真相:県の消防広域化推進計画 効率的な救急体制を確保 /熊本

 ◇「住民の理解」がカギに

 人口が減少し、高齢化が進む中、県内に13ある消防本部を四つに再編し、広域化する県の「消防広域化推進計画」の策定が進められている。広域化することで機動的、効率的な消防・救急体制が確保できるといい、国の指針にも沿うものだ。学識経験者や医療従事者、住民代表らでつくる策定委員会は5月に3回目の会合を開き、計画を固めるが、住民の理解を得られるかが実現のカギを握る。【伊藤奈々恵】

 06年の県内の救急車出動件数は7万954件。10年前の96年に比べ、2万8599件も増えた。高齢化が進み急病による出動が増えていることが最大の要因だ。救急のニーズは今後、さらに高まることが予想されるが、小規模な消防本部では、人口減少で、財政面から消防・救急サービスの維持が難しくなると心配されている。

 国は、消防の広域化で問題を解決しようと06年7月、一つの消防本部の管轄人口が30万人以上となるよう自主的に広域化を進めることを求める指針を出した。県の計画策定もこれを受けたものだ。

 国の指針や県の素案などによると、消防本部の規模拡大は財政難の消防本部の“救済”につながることに加え、指令業務や事務部門を一体化することで、現場に多くの人員を配置でき、救急救命士など専門化した職員も育てられる。

 また、大規模災害が発生した場合など、これまでは必要に応じて他消防本部から「応援」を受ける形だったが、発生直後から統一的な指揮の下、大量の人員や資機材をスムーズに投入できる。

 地域によっては、救急車などの到着が早くなるメリットもある。球磨村に近い芦北町のある地区では、これまで20分かかっていたところが、9分で救急車が到着するようになるという。県は、県内39地区の約6800世帯で、到着までの時間が平均約7分短縮される、と試算している。

  ◇  ◇

 県内では13消防本部のうち、管轄人口が30万人を超えるのは県都の熊本市消防局(67万人)だけで、10万人に満たない本部が7もある。最少の上球磨消防本部は約3万5000人に過ぎない。

 計画の素案では、有明、山鹿植木、菊池、阿蘇を「城北」(管轄人口49万人)▽熊本市、宇城、上益城、高遊原南を「中央」(90万人)▽八代、水俣芦北、人吉下球磨、上球磨を「城南」(30万人)の3ブロックに再編。交通事情などで他地域との連携が取りにくい天草広域連合消防本部(13万人)だけは単独で残す。将来は県下1消防本部とすることも視野に入れている。

 ただ、各地の消防本部の中には「ブロックの中で端に位置する地域にも迅速な消防力を投入できるのか」「本部ごとに異なる職員の給与や身分はどうなるのか」などの不安の声もある。

 国の指針では、12年度までに広域化するよう求めている。県の広域化推進計画が決まれば、今度はブロックごとに運営方針や消防本部の位置などについて協議することになる。市町村の足並みはそろうのか、住民の理解は得られるのか--。正念場はこれからだ。

毎日新聞 2008年4月29日 地方版

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