いまだ「道路」「公共事業」と国に媚びへつらう首長たちよ、目を覚ませ
地方自治体を借金地獄≠ノ追い込む 「毒入り交付税」の悪夢の連鎖を断ち切れ
2008年4月4日(金)0時0分配信 SAPIO
掲載: SAPIO 2008年3月26日号
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地方自治体の財政難は深刻さを増し、「第二の夕張はどこか」と危惧されている。自治体を借金漬けにしたのは、地方の甘えか、国の無策か。
鳥取県知事を2期務めた片山善博・慶應義塾大学大学院教授が、自治体格差を無くすはずの地方交付税が、逆に地方の首を絞め続けている現状を解説する。
国の政策の道具と化した 「ひもつき」交付税
地方交付税制度は、かつてはまともに機能していた。だがバブル崩壊後は制度が傷み、現在に至るまで劣化が続いている。その原因は、恣意的な基準操作によって地方交付税をひもつき≠ノしている国と、国に甘えて自立精神を失った地方の双方にある。
そもそも地方交付税制度とは、所得税、法人税など国税収入の一定割合をプールし、所定の計算ルールにもとづいて地方自治体に配分する仕組みだ。本来、自治体の財政は自前で調達する地方税によって賄われるのが原則だが、地域による経済力格差が大きい現状では、潤沢な税収が得られる自治体と乏しい税収しか確保できない自治体が当然生まれる。
また、自治体が行政サービスを行なうに際しても、地域間でそのコストは大きく異なる。例えば義務教育は全国どこでも一定の水準を保つことが要請されるが、児童・生徒数の多い地域の学校と過疎地の学校では1人当たりのコストに大きな差がある。こうした「規模の不利益」は、税収の少ない自治体において生じるのが通常だ。
そうした事情から、すべての自治体がその財源を地方税で賄うのではなく、一定の税収を国税として徴収したうえで、自治体に配分することにしたのが地方交付税制度だ。つまり地方交付税は自治体の共有財源であり、地方税の代替物として配分される財源なのである。
ところが現実には、地方交付税は国の政策の道具と化し、自治体が自らの必要に応じて自由に使える財源ではなくなっている。その大きな原因のひとつが、私が「先食い」と名付けた仕組みだ。
バブル崩壊後の景気対策の一環として、国は自治体に地方債を起債させ、借金で箱モノなどの公共事業を行なわせた。そして「後年度に償還するときに、その分を交付税で上乗せしてあげますよ」と約束していた。
地方にとっては、持ち出しなしで仕事ができるのだから、こんなにうまい話はない。とにかくハード事業をやれば交付税が増えるということで、「やらなきゃ損」とばかりに全国の自治体が公共事業に走った。
その結果、全国各地に立派な文化会館や文化ホール、巨大な美術館やサッカー場などができた。また、整備新幹線にもこの手法が取り入れられ、山形や秋田に新幹線が通ったのも、この「先食い」の仕組みのおかげである。
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